ナイスクエスチョンだね。この数値設定は主に疫学研究の結果に基づいているんだ。NHKの国民生活時間調査等をもとに計算すると、時間外労働時間が4時間もしくは5時間になると、睡眠時間が6時間を下回ってしまう。そうすると脳・心疾患、うつ病などのリスクが上昇するという疫学研究の結果があるんだ。

 私なんか睡眠時間が7時間を下回っただけでも調子を崩しちゃいます。

 ヒツジ君は普段からよく眠るからねえ(笑) 何らかの基準を示さなければ現場ではなし崩しになってしまう恐れがあるので「時間外労働時間を月〇〇時間以下」と具体的に示してあるけど、それ以下でも体調を崩す人はいるでしょう。長めの睡眠が必要な人には、余暇や自分磨きの時間を削ってでも休養と睡眠を確保して欲しいのだけれどね。

 でも、忙しいサラリーマンや受験生にとっては「短い睡眠で済ませたい!」って人も多いんじゃないかな。

 トリ君、そうなんだよ。「睡眠時間が短くても質が良ければOK」なんて書いてある記事もかなり見かけます。でもね、これからが今日の本題になるんだけど、そもそも「睡眠の質」って科学的に定義されていないって知ってた?

 えーーーっ!?

 より正確に言えば、睡眠の質の良し悪しは数値で示せない、ということなんだ。

 でも、“深い睡眠”が多いのが質の良い睡眠って聞いたことがあります。

 それは誤りだね。ヒツジ君の言う深い睡眠というのは睡眠ポリグラフ検査で判定される3Hz前後のゆっくりした脳波が出る深いノンレム睡眠(徐波睡眠)のことだね。残念ながらそのような睡眠パラメーターで睡眠の質の良し悪しを語ることはできないんだ。深い睡眠はよい睡眠の指標の一つとして取り上げられることが多いけど、必ずしも睡眠の質を保証しているわけではないよ。例えば、睡眠不足に悩む人では睡眠時間が短いにもかかわらず深い睡眠の量はむしろ多めだよ。というのも、睡眠不足の時に削られるのは大部分が浅いノンレム睡眠とレム睡眠だからなんだ。

 ノンレム睡眠もレム睡眠も、浅いのも深いのも、まんべんなく減るわけじゃないのね。睡眠不足に悩む人で徐波睡眠が増えているなら、確かに徐波睡眠量を指標とするのは矛盾するなぁ。

次ページ:深い睡眠が減って満足度が高まるケースも

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