第110回 「睡眠は短くても深ければOK」のウソ

 新年早々、悩ませちゃったね。それじゃ、現時点で分かっていることをまとめます。

 まず、これまでの説明を聞いて何となく気付いたと思うけど、睡眠の質というのはその人の主観的体験だと言うこと。眠りから目覚めた後に、疲労回復感があり、日中に眠気もなく心身共に元気に働くことができる、それが質の良い睡眠が取れている証拠です。つまり睡眠の質は睡眠で判定するのではなく覚醒状態の様子で判定します。

 睡眠の質は目が覚めているときに判定するのだから、考えてみれば当たり前なのかな? でも何か騙されたような気分です。

 目が覚めてるときに判定するなら、睡眠じゃなく日中の体調に関連する指標の方が大事じゃないの?

 今年のトリ君はなかなか鋭いよ。実は主観的に感じる睡眠の質は、前夜の睡眠状態そのものよりも、その人のメンタルヘルスが一番関係しているんじゃないか、という研究結果もあります。例えば抑うつ感や不安感が強い人は睡眠ポリグラフの結果よりも睡眠の質を大幅に低く評価しやすい、などね。

 これまでこのコラムでは何度も解説してきたけど、睡眠の長さにしても、深さにしても、眠る時刻にしても、大いに個人差があります。万人に共通する快眠指標のようなものはないのかもしれないね。でも「睡眠の質」の本態を知りたいという要望が強いので、現在、私も参加している厚生労働省の研究班では「睡眠の質」に関する科学的知見を収集して検討を始めているんだ。健康生活に直結する分かりやすい睡眠指針ができることを期待して頑張ってます。

 働き方改革関連法には賛否両論あるけど、ライフワークバランスを考え直すまたとないチャンスであることは間違いありません。冒頭でヒツジ君が話してくれたけど、活力ある生活を送るために、十分な休養感が得られるようにしっかり眠って、この1年を頑張ろう!

 はーーい!

つづく

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三島和夫

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三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授。医学博士。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事など各種学会の理事や評議員のほか、睡眠障害に関する厚生労働省研究班の主任研究員などを務めている。これまでに睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者も歴任。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、集英社文庫)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。近著は『朝型勤務がダメな理由』。