監修者が解説!ココが見どころ「世界遺産 ラスコー展」

クロマニョン人はおしゃれだった?

 展覧会には、古代人の復元を専門とするフランスの芸術家が作った、クロマニョン人の模型が4体ある。これらを見た方々は、ほぼ全員、その現代人と変わらぬ姿とおしゃれな服装に驚く。

等身大のクロマニョン人復元模型。私たちと同じホモ・サピエンスだ。
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 彼らが現代人と同じ容姿をしていたことは、骨格形態が似ていることからわかる。一方で衣服は遺跡に残らないために想像で復元している部分があるのは事実だが、クロマニョン人の衣服は本当にこのように格好良かったのだろうか?

 それは彼らが使っていた現代のものと同様に繊細な縫い針(骨製)に加え、大量に見つかっているビーズ、絵や彫刻などから明らかな卓越したデザインセンス等に触れて頂ければ、決してやりすぎとは言えないことをご納得頂けるはずだ。

「骨製の縫い針」。長さ約4cm。(フランス国立先史博物館(レゼジー)所蔵)
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ヨーロッパの芸術の起源

 そのように見るものの心を動かす芸術は、700万年におよぶ長い人類の歴史の中でいつ芽生えたのだろうか?

 本展では、ヨーロッパにおける過去60万年の人類史に注目し、クロマニョン人以前の当地の住人であったハイデルベルク人やネアンデルタール人には、そのような芸術的活動の証拠がないことを説明する(末期のネアンデルタール人はアクセサリーを作ったかもしれないが、それはクロマニョン人の行動の模倣だったという説もある)。

丸みのある成熟した女性を表した「ヴィーナス」の彫刻。およそ3万年ほど前のヨーロッパ各地でよく作られていた。(フランス国立考古学博物館(サン=ジェルマン=アン=レー)所蔵)
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 従って、少なくともヨーロッパでは、芸術の起源はクロマニョン人にあると言える。だから彼らの正体、つまりどこから来た誰なのかがわかれば、人類史における芸術の起源という謎に迫れるはずだ。

「ハイエナのような動物が彫られた投槍器」。珍しくマンモスの牙でできている。12cmほど。(フランス国立考古学博物館(サン=ジェルマン=アン=レー)所蔵)
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クロマニョン人の正体とは

 クロマニョン人の素性を、化石人骨から確かめる。彼らの頭骨のかたちは私たちのものと同様で、さらにDNAも共通しているので、彼らは私たちと同じホモ・サピエンスであることがわかる。そのホモ・サピエンスは、20万~10万年前頃のアフリカで進化したことが明らかになっていて、つまるところ彼らは……? そして芸術の起源も……? 後は皆さんがお考えになるか、あるいは展覧会場へお越し頂きたい。

「クロマニョン人頭骨(クロマニョン1号)レプリカ」。ラスコー洞窟から20kmほどの場所にあるクロマニョン岩陰で見つかったもの。クロマニョン人という名前のもとになった。(国立科学博物館所蔵)
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「グリマルディ洞窟遺跡のクロマニョン埋葬人骨 レプリカ」。およそ3万年前のもの。(個人所蔵)
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そのとき日本列島は?

 本展を締めくくるのは、「クロマニョン人の時代の日本列島」という特別コーナーである。ヨーロッパで壁画が描かれたころ、日本列島へ渡ってきた祖先たちは、一体何をしていたのか? 日本旧石器学会の協力のもと、縄文時代以前の日本列島で祖先たちが織りなした、知られざる多彩で創造的な活動をご紹介する。私が代表を務めて推進している「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」の活動も、実はそこに関係がある。

 国立科学博物館というタイムカプセルに用意したクロマニョン・ワールド。そこには私たちとは何者なのかを探るヒントがあるので、ぜひご体感頂きたい。

文・海部陽介(国立科学博物館 人類研究部人類史研究グループ長)

特別展「世界遺産 ラスコー展 ~クロマニョン人が残した洞窟壁画~」

会期:2016年11月1日(火)~2017年2月19日(日)
会場:国立科学博物館(東京・上野公園)
開館時間:午前9時~午後5時(金曜日は午後8時まで)
公式サイト:http://lascaux2016.jp/

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