アリスとドードーの自然史博物館に行ってみた!

書籍『ドードーをめぐる堂々めぐり 正保四年に消えた絶滅鳥を追って』から紹介 第2回

『不思議の国のアリス』や『ドラえもん』にも登場する絶滅鳥のドードーが、実は江戸時代に日本に来ていた! ふと目にした論文に衝撃を受けた文筆家の川端裕人氏は、ドードーの行方を探究するうち、日本はもとより欧州各国、ついにはモーリシャス島へ行ってしまう。伝説の絶滅鳥の“驚異”に満ちた新刊『ドードーをめぐる堂々めぐり 正保四年に消えた絶滅鳥を追って』(岩波書店)から、アリスの「聖地」でもある英国オックスフォードの博物館を訪れたエピソードを紹介する。(全3回)

オックスフォード大学自然史博物館。(写真提供:川端裕人)
オックスフォード大学自然史博物館。(写真提供:川端裕人)
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 いよいよ博物館の中へ。そこはアリスとドードーが中央に鎮座するまさにワンダーランドだった。

 作中に登場する動物たちをテーマにした「ザ・リアル・アリス」というコーナーがあって、『不思議の国』『鏡の国』に登場した様々な動物が、本物の標本で示されている。ジャバウォックのような想像上の生き物はともかく、「モデル」がいるものをオックスフォードの標本で構成しましょう、という趣向だ。

「ザ・リアル・アリス」のコーナー。(写真提供:川端裕人)
「ザ・リアル・アリス」のコーナー。(写真提供:川端裕人)
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 例えば、アリスの涙でできた池を泳ぐネズミは“wood mouse”。OUM23603という標本番号まで添えられている。OUMは、オックスフォード・ユニバーシティ・ミュージアムの略だ。他にも、標本ナンバー付きのウサギやシカやセイウチなどが、物語の中から引用された語句や挿絵とともに展示されていた。

 そして、その隣にあって、『アリス』とつながりつつ、独自の輝きを発するのが、我らがドードーだ。パネルまるまる一枚をドードーだけに費やしており、メインの図像としては、有名なルーラント・サフェリーの「ジョージ・エドワーズのドードー」を使っている。

ドードーだけで1つのコーナーが。(写真提供:川端裕人)
ドードーだけで1つのコーナーが。(写真提供:川端裕人)
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 またドードーの標本としては、ロンドン自然史博物館の全身骨格のレプリカと、それをもとにした復元模型(フェイクの剝製)。オックスフォード大学は、歴史的に重要なドードーの研究拠点だが、完全な骨格標本は持っていない。

 では、この博物館が所蔵する「オックスフォード・ドードー」とは、どんなものか。

 それは、頭部と左脚、だ。それも、皮膚が残っており、これは世界でただ一つ残されたドードーの軟組織なので、まさに唯一無二。「オックスフォード・ドードー」を特別なものとしている点だ。

二つの箱の中に入っていたもの

 オックスフォード大学自然史博物館のキュレーター、マルゴシア・ノワク-ケンプ(Malgosia Nowak-Kemp)が標本を見せてくれた。彼女は絶滅哺乳類の専門家だが、自らが管理するドードー標本についても、ロンドン自然史博物館のジュリアン・ヒュームとともに二篇の論文にまとめている。

 彼女に導かれて、職員以外立入禁止のエリアに入ると、パソコンや撮影台が置いてある作業用の小部屋に、「PR」と大きなラベルが貼られた箱が二つ準備されていた。靴を買った時についてくるような細長い紙箱で、それぞれ紳士物の革靴サイズと、子どものスニーカーサイズだった。

「PR」というのは、プライオリティ(priority)の「PR」だそうだ。例えば火事などで、手に持てる範囲で標本を持ち出さざるを得ない時、まずこの「PR」ラベルがついたものを優先するという。

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