「コウテイペンギンの姿から今の南極を感じて欲しい」 映画『皇帝ペンギン ただいま』監督インタビュー

2005年に大ヒットし、翌年のアカデミー賞(長編ドキュメンタリー賞)など数々の賞に輝いたドキュメンタリー映画『皇帝ペンギン』の続編『皇帝ペンギン ただいま』が2018年8月25日から公開される。 “世界で最も過酷な子育てをする鳥”と言われるコウテイペンギンの暮らしを追いながら、世界初となる南極の水深70メートルの海での撮影にも成功したという。監督は前作に続いてリュック・ジャケ氏。最新作の見所や危機的状況にあるという南極の現状などについて話を聞いた。




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コウテイペンギンに近づくリュック・ジャケ監督 撮影=Vincent Munier

――前作(『皇帝ペンギン』2005年公開)から13年ぶりとなる映画『皇帝ペンギン ただいま』をなぜ制作することになったのでしょう。

 そもそもペンギンは人生の半分を水中で過ごすものなのに、前作で撮影できなかったことがずっと心残りで。当時は光が弱い水中を撮影することが技術的に難しかったんです。それから10年以上が経ち、暗い深海でも撮影できるカメラがでてくるなど撮影機材が劇的に進化し、熟練ダイバーとも知り合ったことで、水中撮影が可能となる条件が揃ったんです。その結果、今作では水中を飛ぶように狩りをするコウテイペンギンや、海氷の下に生息する多様な生き物、たとえば甲殻類や何千ものホタテガイ、海綿動物や魚などを美しい映像でとらえることができました。私たちが撮影したものはどれも世界初の貴重なものです。

 2015年の気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)もきっかけのひとつです。この会議で私は南極に出向き、現地の状況をライブ映像で伝える機会を得ました。実際に現地の様子を見てもらうことで地球温暖化に対する議論が少しでも有意義に働けばいいと思ったんです。このCOP21での活動を通じ、南極に迫る危機をもっと広く知ってもらいたいという気持ちが、新しい作品を撮る後押しとなりました。

――監督が初めて南極を訪れた1991年と比べて、環境はどう変化したと感じていますか?

 温暖化によって、アイスバーンの状態など南極の景色が変わっています。1991年以降、2、3年に1回のペースで南極に行っているのですが、今回の南極遠征で初めて雨を体験したんです。これには衝撃を受けました。めったに雨が降らない南極で、このような状況になったのは気温が上昇したからだと思います。

 コウテイペンギンのヒナの羽には耐水性がないため、雨に濡れてしまったら凍死する可能性がありますし、実際に雨に打たれたことでたくさんのヒナが死んでいる。南極の生き物たちにとって氷が解けるか解けないかという状況は命に関わり、生態系にも大きな変化をもたらします。今の状態が続くと50年後にはコウテイペンギンは絶滅すると言われており、強い危機感を持っています。