特別展「植物」に行ってみた 驚きのサバイバル能力が続々
続く展示「極限環境に生きる植物たち」も魅力的です。ギリギリの環境で、植物たちは「動かないサバイバル」をどのように実践しているのか。まずは砂漠です。
南アフリカの砂漠を再現したこの展示には、黒いネームプレートがたくさん立っていますが、どこに植物がいるかわかりますか?
石ころに混じって、ぽつぽつと顔を出す何種類かの植物。「魔玉(ラピダリア・マルガレタエ)」なんて名前のものもいます。これらの植物は、石ころのような姿で砂漠の景観に溶け込むことで、動物に食べられないようにしていると考えられています。このほか乾燥地の植物たちは「多肉化」することで、葉や茎に水を貯蔵しています。
次は高山に生育するキク科のボンボリトウヒレンという植物。
名前の通りぼんぼりのような花、と思いきや、この白いものは葉(苞葉)なんだとか。苞葉は、花を包み込むことで、花にとって温室のような環境を作り出している。寒い高山で生き抜くための工夫ですね。こうした植物を「温室植物」と呼ぶのだそうです。
ほかにも水中や樹上、南極などで生き抜く植物たちの工夫が紹介されていました。
進化の歴史
大画面の復元イラストで植物進化の歴史を学べるのも、今回の植物展の魅力のひとつ。
「みなさんは、今いる植物が当たり前と感じていると思いますが、植物界が現在のようなメンバーになったのは、地球の46億年のスケールで見れば比較的最近のことなんです」と、この展示の監修を担当した国立科学博物館の矢部淳さんは言います。
「陸上に植物が現れたのは5億年前。会場には4億年前の復元図を展示していますが、風景は今と全然違っていて、高さが1メートルにも満たないシダやコケの仲間ばかりの世界でした」
当時の植物のひとつがクックソニア。化石が展示されています。4億年前の植物の姿が化石で残っているなんて素敵ですね。胞子が見つかったことで、陸上植物であることが判明したそうです。
現在の森林にぐっと近づくのは、1億2500万年前。ついに花を咲かせる被子植物が登場する。当時はまだ裸子植物やシダ植物が中心ですが、再現イラストには最古の被子植物のひとつ、アルカエフルクトゥスが描かれています。その後、恐竜の時代が終わるころまでに、被子植物は世界を覆うようになります。
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