2018年、メキシコで水中撮影をする山舩晃太郎氏。(写真提供:Alfredo Martínez Fernández)
[画像をタップでギャラリー表示]

2015年に地中海で大量の沈没船が発見された(「地中海で大量の沈没船が見つかる、ギリシャ沖」)。その後に行われた沈没船調査に、唯一の日本人として参加したのが水中考古学者の山舩晃太郎氏である。当時の様子も綴った初の著書『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』(新潮社)から一部抜粋してお届けする。(全3回)

水中作業は「下見」がポイント

 私が世界各地で潜るのはフォトグラメトリ(何千枚もの水中写真から調査現場の3Dモデルを作成する手法)を行うためだ。
 デジタル3Dモデルを実際に作成するのはパソコンのソフトウェア上になるので、私が水中で行わないといけないのは、その材料となるデジタル写真の撮影だ。

 私は最初の水中作業で写真撮影はしない。まずはカメラを持たず1回現場に潜り、実測図に入れるべき範囲を最初の潜水時に決める。
 例えば、海底に散らばる露出した遺物(積み荷)だけでなく、その散らばり方や、周りの地形、そして今後、発掘作業が進んでいって、発見されるであろう船体の埋まっている範囲を自分の目で確認し、予想する。
 そして、自分がどのように遺跡を移動しながら写真撮影を行えば、歪みと穴(欠落箇所)のない、必要な情報を反映した3Dモデルになるかを想像し、泳ぐ道順(フライトパス)を決める。

 2回目のダイビングから、いよいよ写真撮影を行う。だけど、この時もすぐには写真撮影は始めない。
 まずはスケールバー(大きな定規)を沈没船遺跡の周りに設置する。私の場合、設置した位置が、後にデジタル3Dモデルから実測図を作成した時の枠組みになるよう、遺跡の外縁部に置くことが多い。これらのスケールバーをデジタル3Dモデルの一部として作成することにより、後にデジタル3Dモデルに寸法(大きさ)が反映されるのだ。

 スケールバーを遺跡に設置し終えたら、その端の水深をダイビングコンピューターで測り、記録しておく。この水深を使い、後に作成したデジタル3Dモデルに正しい傾きを与えることができる。「正確な寸法」と「正しい傾き」の2つを与えることによって、局地的な座標を遺跡のデジタル3Dモデルに与えることが可能になるのだ。

UFOのように動いて撮りまくる

 私が水中で使っているのは、いわゆる普通のデジタルカメラである。これを「水中ハウジング」という防水ケースに入れて使う。カメラは高画質であればあるほど良い。
 ちなみに使うレンズは広角なものを選ぶ。これがポイントの1つ目だ。水中遺跡の場合、透明度の問題が出てくるのだが、広角レンズを使用すれば、遺跡に近づいても、広い範囲をとどめたまま写真撮影ができるからだ。
 撮影の対象物とカメラの間にある水の量が少なければ、よりクリアな写真が撮れるので、できるだけ近くから撮りたい。ただし歪みの大きい魚眼レンズは避ける。

この連載の前回の
記事を見る