周辺が暗いため、カメラに取り付けてある水中ライトを点ける。
 すると美しい世界が目の前に突然現れた!
 綺麗に積み重なっているアンフォラと海底はライトの光に照らされ驚くほど白く、その光が私の周りの蒼を一層濃くした。アンフォラには濃い黒色、オレンジ色、赤色の海綿(スポンジ)が張り付いて生きている。まるで油絵の具で塗りたくったみたいだ。

 海底がこんなにカラフルだとは! 初めての世界に感動した。

 続いて水深60mの遺跡にも潜ることになった。水深50mより深い場所は、それより浅い場所とは違う世界だ。「吸い込まれるのでは」と錯覚しそうなくらいの暗闇だ。目が慣れてくると、闇のようだった黒い蒼が、徐々に紫のような、紺碧のような、何とも表現が難しいが美しい色に変わる。まるで自分自身もその中に溶け込んでしまったような感覚に陥る。本当にそれほど濃い蒼なのだ。なんて美しい世界だ!!!
 この水深60mが、私にとって最も深い場所での作業になった。沈没船の美しさと、自分も蒼の一部になったような感覚は今でもはっきりと覚えている。

つづく

山舩 晃太郎(やまふね こうたろう)

1984年3月生まれ。2006年法政大学文学部卒業。テキサスA&M大学・大学院文化人類学科船舶考古学専攻(2012年修士、2016年博士号修得)船舶考古学博士。合同会社アパラティス代表社員。テキサスA&M大沈没船復元再構築研究室研究員。西洋船(古代・中世・近代)を主たる研究対象とする考古学と歴史学の他、水中文化遺産の3次元測量と沈没船の復元構築が専門。

沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う

英語力ゼロなのに単身渡米、ハンバーガーすら注文できず心が折れた青年が、10年かけて憧れの水中考古学者に。その日常は驚きと発見の連続だった! 指先さえ見えない視界不良のドブ川でレア古代船を掘り出し、カリブ海で正体不明の海賊船を追い、エーゲ海で命を危険にさらす。まだ見ぬ船を追うエキサイティングな発掘記。


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