「頑張らなくていいから」 ギリシャ人リーダーからの洗礼に出した答え

書籍『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』から紹介 第2回

(写真提供:University of Zadar)
(写真提供:University of Zadar)
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2015年に地中海で大量の沈没船が発見された(「地中海で大量の沈没船が見つかる、ギリシャ沖」)。その後に行われた沈没船調査に、唯一の日本人として参加したのが水中考古学者の山舩晃太郎氏である。当時の様子も綴った初の著書『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』(新潮社)から一部抜粋してお届けする。(全3回)

アンフォラ探しは人海作戦

 フルニ島での3週間にわたる水中調査プロジェクトは、メンバーが5つの班に分かれて作業することとなった。ギリシャ人チームは、ダイバー中心の2班と保存処理専門の1班の3つに分かれた。

 ダイバー中心の2班は、未調査の海岸線を引き続き潜水調査する。
 水中での保存状態は、陸上と比べて良いとは言え古代船の船体の木材部分はとっくに朽ちている。残存している木材も海底に埋まっているため視認できない。そのため、一般的にはワインなどの液体を運ぶために大量に積み込まれる「アンフォラ」という陶器の壺が海底面に残されているのが見つかることがほとんどで、船の木材部分はその下に隠れているのだ。
 しかし、アンフォラは測量機器で取ったデータで見ると岩の塊と区別がつかない。つまり、沈没船探しとはアンフォラ探しと言ってもいい。そのため実際にダイバーが列を作りながら潜り、目視で見つけるしかないのだ。

 保存処理の専門班は数個のアンフォラを引き上げ、長年水中で保存されていた遺物が空気に触れることによって劣化しないよう直(ただ)ちに保存処理を行う。アンフォラの形状から、その沈没船がどの時代の船で、どこの地域から荷物を運んでいたのかが分かるため、アンフォラの研究は古代ギリシャや古代ローマの考古学では最も盛んな研究分野の1つである。

 私達は全ての準備が完了すると、アテネに隣接するピレウス港に集合し、フルニ島に向けて出港した。フェリー船で9時間の長旅だった。

夢のような調査現場

 フルニ島での調査の初日、沈没船の現場を見るため、私達の班とピーターは海に潜ることにした。
 海の色は、紫と蒼が混ざったようなサファイアブルー。私達の後ろには100m以上の大きな石灰岩の真っ白な崖がそびえ立つ。

 船が沈んでいる海岸線は、島の波止場から小型ボートで10分もかからなかった。
 準備が整うと他のメンバーを残し、ピーターと私が海に飛び込んだ。水深20mを維持しながら、海岸線に沿って北に300m程泳いでみる。水の中の景色も格別だ! 水中の透明度は40mはあるだろう。水の中にいるというよりは青い世界を飛んでいるような感覚だ。白い崖は、水中では少しなだらかになっていて、水によって濃い蒼に塗りつぶされていた。

「沈没船はどこだろう?」

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