マンモス再生は、どこまで現実に近づいているのか? 研究者が解説

 マンモスとの出会いは2002年でした。岐阜県の支援を受け、ヤクーツクの北1200キロの北極圏に位置するマクスノーハ河畔からマンモスの脚を発掘しました。マンモスの脚は凍った状態のままヤクーツク市のマンモスミュージアムへ運ばれ、皮膚、筋肉、骨および骨髄の各組織が採集され、翌年に近畿大学へ運ばれました。放射性炭素年代測定によると、これらの組織は約1万5000年前のものであり、DNAの解析からマンモスのものであることも確認できました。

 いよいよ細胞核の移植実験です。私たちの研究では、あらかじめ核を除いたマウスの卵に、マンモスの細胞核を注入する方法を試みました。その結果、マンモスの細胞核が変化すれば、マンモスの組織に由来する細胞核が数万年の時をこえて、その生物学的特性を維持していることがわかる、というシナリオです。

 マンモスの組織から細胞核を採集し、全部で149個のマウス除核卵へ、慎重に注入しました。卵を培養し、核の注入後1時間と7時間において顕微鏡下でマンモスの核の変化を観察しました。しかし、すべてのマウス除核卵において、注入後に何らかの変化をおこしたマンモスの核はありませんでした。

 この実験において、注入後のマンモスの核に変化がおこらなかったのは、マンモスの核とマウスの卵の組み合わせが不適当だった可能性や、実験に用いたこのマンモスのサンプルそのものが、生物学的特性を失っている可能性が考えられました。しかし、この一例だけで結論を出してしまうのは性急に過ぎると判断し、次の機会を待ちました。

細胞核が動いた!

 2011年12月に、ロシア連邦サハ共和国科学アカデミーの研究者から、非常に状態の良いマンモスの個体が発見さたとの連絡がありました。2005年に愛知万博で展示されたマンモスの頭部「ユカギルマンモス」と同じ地域で発見された若い雌個体であることから「YUKA」と名づけられました。

ロシア、サハ共和国で発掘された当時の冷凍マンモス「YUKA」。(写真提供:近畿大学)
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発掘当時の「YUKA」の頭部。鼻と耳がほぼ完全な形で残存していた。(写真提供:近畿大学)
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 内臓はほぼ失われていましたが、四肢や鼻を含む頭部は非常によく保存されていました。2013年7月、私たちは「YUKA」から採集した筋肉組織や骨髄組織を近畿大学へ運び、さまざまな実験をおこないました。

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