「マンモス展、ここが面白い」監修者が解説
発掘場所:サハ共和国ノボシビルスク諸島 マールイ・リャホフスキー島(Photo:Yasutaka Hoshino(NEXTERA))
今回展示されるのは、見つかった鼻の先端部だ。表面(垂れ下がった鼻の体から遠い面)には毛がびっしりと生えていて裏面(体に近い面)には毛がない。鼻の先端の形態はゾウの種類によって異なっていることが報告されていて、ケナガマンモスの鼻は上の突起が細長く、下の突起は幅広いと考えられていた。
しかし今回見つかった標本には、上に1つの突起と下には2つの突起が認められる。これは埋没後に変形したものなのか、種としての特徴なのか今後詳しく検討する必要があるが、もし変形でないとすると興味深い。これまでは上にある1つの突起だけで草をちぎって食べていたと考えられていたが、実は3つの突起で器用に草をむしることができたかもしれない。また、裏面には鼻先から上方にやや幅広い部分があり、ここに鼻先をまるめて外気の寒さから鼻の先端を守っていたのではないかと考えられている。
今回展示されるのは鼻の先端だけだが、発掘されたのは全長210cmの鼻の全体だった。今後この標本を研究することで、ケナガマンモスの鼻の全貌が明らかになるのではないかと期待される。
発掘場所:サハ共和国ベルホヤンスク地区ユニュゲン(Photo:Yasutaka Hoshino(NEXTERA))
較正年代3万1150年前のマンモスの皮膚と毛も展示される。これは2018年8月、「マンモス展」にあわせて、ロシア北東連邦大学と日本との合同調査が行われた際に、サハ共和国ベルホヤンスク地区ユニュゲンで発見採集されたものだ。マンモスの皮膚の色が生々しく残っている。後肢から腹部にかけての広い範囲の皮膚で、場所によって皮膚の色が違っており、生きていたときの姿を彷彿させる。この近くには下顎骨や椎骨、四肢骨などが散乱していたという。マンモス展ではそのときの様子をビデオで見ることができるが、永久凍土の発掘がいかに困難な発掘であるかを認識させてくれる。
マンモス動物群
ケナガマンモスが生息していた4~3万年前のシベリアにはケサイやホラアナグマ、バイソン、ノウマなど草原に住む動物たちが共生していた。これらの動物たちも今回の展覧会で見ることができる。
おすすめ関連書籍
「ナショジオ トピックス」最新記事
バックナンバー一覧へ- ラップランドでそり犬と暮らすティニヤ、電気も水道もない場所に移住した理由
- 監修者が解説、特別展「化石ハンター展」の見どころ、100年前の“史上最大級”の探検
- 世界の女性は今「女として生きること」をどう考えているのか、4人の証言
- 宝石をカガクする! 特別展「宝石」 監修者が見どころを解説
- 監修者が解説、特別展「ポンペイ」の見どころ、2000年前が鮮やかに蘇る
- これがドードーの頭部(ミイラ)だ!
- アリスとドードーの自然史博物館に行ってみた!
- ドードーを一躍有名にした『アリス』の聖地と"as dead as the dodo"
- 新種と判明、古代ワニに「誤飲防止弁」を発見、水辺進出の始まり【研究者本人が解説】
- ネオニコチノイド系殺虫剤を使い始めた1993年に起きたこと