「マンモス展、ここが面白い」監修者が解説
東京・お台場の日本科学未来館で企画展「マンモス展」-その『生命』は蘇るのか- が開催されています(2019年6月7日~11月4日)。冷凍マンモスほか展示の見どころについて、今回の展示を監修した野尻湖ナウマンゾウ博物館館長、近藤 洋一氏に語っていただきます。
マンモスといえば、2005年の愛知県の「愛・地球博」でも展示された冷凍マンモス「ユカギルマンモス」や2013年横浜で展示された少女マンモス「YUKA」などが有名で、こうした冷凍マンモスは幾度か日本にきており、日本では最も人気のある古生物の一つだといってもいいだろう。
マンモスと聞いて想像する姿は、大きな曲がった牙(切歯)と尖がった頭、そして全身を覆う長い毛だが、これはケナガマンモスのことである。こうしたリアルな復元ができるのも、冷凍でケナガマンモスの軟体部がそのまま残存していることで、生きた時の姿を知ることができるからだ。
冷凍マンモスは、古生物としてはたいへんめずらしい貴重な標本である。筆者は今回の展示に先立って、ロシア、サハ共和国のロシア北東連邦大学等でこれらの冷凍標本を調査する機会を得たので、主だった古生物の標本について概要を紹介したい。
冷凍マンモスの魅力
今回の「マンモス展」では、「ユカギルマンモス」が再度来日する。マンモスの頭部としては最も保存状態が良い完全な標本で、大きくねじれた牙と小さな耳、側頭腺など、冷凍標本ならではの迫力がある。
発掘場所:サハ共和国ウスチ・ヤンスク地区 イリン・ヴィラフチャアンニア川下流地域(Photo:Yasutaka Hoshino(NEXTERA))
側頭腺とは現生ゾウにもみられる、耳と目の間にある小さな穴で、強い刺激臭のある液体を分泌する。この分泌物は周期的に排出され、その時期(マトス期とよばれる)は攻撃的になり頻尿や食欲不振になるといわれている。おもにオスに現れる現象であることから性行動に関連しているという見解もあるが詳しいことはわかっていない。
この側頭腺が「ユカギルマンモス」で確認されたことで、ケナガマンモスにもマトス期があることがわかった。ユカギルマンモスはほかにも多くの研究がなされ、ケナガマンモスの古生物学的研究が大きく進展した標本である。
サハ共和国ノボシビルスク諸島マールイ・リャホフスキー島で2013年に発見された、ケナガマンモスの鼻も今回の見どころのひとつだ。3万2700年前という放射性炭素年代(較正年代値)が得られている。マンモスの冷凍標本では、これまで子どもマンモスの鼻は数点みつかっているものの、おとなの鼻はなぜかほとんど発見されておらず、過去に1例があるだけである。
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