遅ればせながら、東京・上野の国立科学博物館の特別展「大英自然史博物館展」に行ってきました。すでにいろんな記事で紹介されてもいますので、今回はあえて“ナショジオ風味濃い目”でレポートをお届けいたします。
ちょっと想像してみてください。
飛行機はもちろん自動車も鉄道もなく、インターネットはおろかカメラすらなかった時代。北極や南極はまだ地図では空白で、世界はとても広く、知らない場所や生きものだらけでした。
大航海時代以降のヨーロッパには、そんな広い世界からさまざまな珍品を集めるコレクターたちがいました。主には王族や貴族でしたが、なかには裕福な民間人もいて、1753年に亡くなった英国の医師ハンス・スローン卿もその1人です。
ハンス・スローン卿が集めたコレクションは8万点にもおよびました。そのうちわけは、書籍から珍しい生きものの標本、化石にいたるまで、古今東西のありとあらゆるもの。彼の膨大なコレクションこそ、大英博物館と、そこから分かれた大英自然史博物館の礎です。
ただし、彼のコレクションに秩序はありませんでした。実は、当時はそれが普通だったのです。世界各地から次々と新たな発見がもたらされ、生物の分類法ができあがるずっと前のことです。コレクターたちは単純に珍しいもの、驚くべきものを集めていただけでした。とりわけ彼はあまりにもいろんなものを集めたので、「ロンドンの大ガラクタ屋」と言われることもあったそうです。
対して、いまの博物館では、生物も鉱物も体系的に分類されて展示されています。この秩序はどのようにして生まれたのでしょうか。
その重要な証拠を数多く保管している場所が大英自然史博物館です。なかでもいちばんのカギとなった人物は、進化論の父であるチャールズ・ダーウィンでしょう。
しかし、進化論はダーウィンがいちから考え出したものではありませんでした。たとえば、ヒトなら「ホモ・サピエンス」というように、属+種名で生物を分類する「二名法」や、聖書の世界観では説明できない地球のなりたちを示した世界初の地質図、また、かの有名なメンデルの遺伝の法則などのように、世界中の標本と知識が集まってゆくなかで、生きものが長い時間をかけて変わる進化という考えが形づくられてゆきました。
今回の大英自然史博物館展には、こうした自然科学の壮大な物語をつむぐ極めて貴重なコレクションが集められました。金銀財宝や美術品ではなくても、それらはまぎれもなく人類の宝です。前置きが長くなりましたが、ではお宝たちを見ていきましょう。