『ファイナルファンタジーXIV』の世界観にナショジオが与えた影響とは?シナリオライター織田万里氏に聞く

 例えば、『FF14』の中には「革細工師」としてアイテムを作成できるシステムがあるのですが、このストーリーを担当するライターが話のネタに困っていたことがありました。その時点で、すでに動物を狩猟して、何かしらの革製品をつくるといったストーリーは出尽くしてしまったので、差別化が難しいというのが担当ライターの悩みでした。そこで「剥製 沈黙の動物たち」(2016年4月号)を思い出し、「剥製をつくり、自然保護の啓蒙活動をするのはどうだろう」と提案したんです。

「剥製 沈黙の動物たち」(2016年4月号)

 ナショジオがきっかけで剥製をめぐる様々な話、例えば趣味で狩猟をして、トロフィー的に剥製をコレクションしている人たちの他に、教育や学術的な研究目的で剥製が使われているということを知りました。特集では人間のエゴで剥製をつくることに対しての問題提起がなされていたのですが、剥製は我々人間にとって生き物に対する考えを変えるきっかけにもなり得るのだと知り、印象に残っていたのです。結果的に担当ライターは、ゲーム内で絶滅危惧種となっているモンスターの亡骸を見つけて剥製にし、在りし日の姿を甦らせることで自然保護を訴えるというストーリーを考案してくれました。

絶滅危惧種となっているモンスターの剥製を展示するFF14のワンシーン。(C)2010‐2021 SQUARE ENIX CO,LTD.ALL Rights Reserved.
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ストーリーに登場する剥製師は「絶滅の危機に瀕する動物たちの死骸から剥製を作り、その姿を後世に伝えていきたい」と訴える。(C)2010‐2021 SQUARE ENIX CO,LTD.ALL Rights Reserved.
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――『FF14』はサービス開始から8年が経とうとしていますが、この間にも2年に一度のペースで、拡張パッケージ発売を行っているとうかがっています。プレイヤーに新鮮さや驚きを提供するという意味では非常に大変な作業だと思います。

 拡張パッケージとは冒険できる世界を広げ、新しいストーリーを追加したものですが、主軸となるメインクエストの他にも、サブクエストと呼ばれる膨大な数のショートストーリーが同時に実装されます。これは、プレイヤーキャラクターのレベルを上げるための、経験値の入手手段という「ゲーム的な都合」のために実装されるものです。一方で架空の世界であるゲーム内世界での人々の暮らしぶりを伝えるために、もってこいの舞台装置にもなり得ます。

「モンスターを倒してアイテムをとってこい」というシンプルな内容であっても、そのモンスターはどんな生き物なのか、なぜ倒さなければならないのか、取得したアイテムはどう使われるのかを短いストーリーに織り込むことで、「異文化」を表現することができます。特にナショジオでは、極地に暮らす先住民の特集なども多いですので、そうした異文化の暮らしぶりのネタを吸収するのに、大いに役立ってくれています。

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