『ファイナルファンタジーXIV』の世界観にナショジオが与えた影響とは?シナリオライター織田万里氏に聞く

――『FF14』の世界観づくりにナショジオが影響を与えた場面もあるとうかがいました。

 例えば、『FF14』における死生観を明確化する際に、ナショジオの特集「生と死 その境界を科学する」(2016年4月号)で得た知識が参考になりました。

「生と死 その境界を科学する」(2016年4月号)

 特集では脳死を扱っていましたが、自分が脳死状態になったとき、臓器提供できるか自問してみたところ、簡単には答えが出なかったんです。当時、子どもが生まれたタイミングでもあったし、非常に考えさせられました。医学が進歩するほど、生と死の境界が曖昧になってきているような実感が自分の中にあったのですが、特集で語られていた「死は瞬間ではなく、プロセスである」という考え方が、強く印象に残ったんです。

 『FF14』はファンタジー作品ですから、現実世界とは異なる法則が存在しています。登場キャラクターを含めて、すべての生命体には、「エーテル」という生命エネルギーが宿っているという設定も、そのひとつです。そして、「魂」もまた「エーテル」によって形作られていると説明してきたのですが、微妙に曖昧さも残されていました。そこで物語が進んでいく過程で、「魂とは何か」について考えていく必要性が生じたときに、先述の特集記事で脳死に至るプロセスとして、「短期記憶」、「認知機能」、「運動機能」、「感覚」、「呼吸と循環」という順で、機能が喪失していくと説明されていたことを思い出したのです。

 その結果、『FF14』の作品世界における生命体に宿ったエーテルとは、「記憶のエーテル(短期記憶)」、「魂のエーテル(認知機能)」、「生命力のエーテル(運動機能、感覚、呼吸と循環)」で構成され、そのひとつでも失われれば大きな問題が生じるという考え方にたどり着きました。

「エーテル」はFF14の世界設定に欠かせない概念。ストーリーを進めると、「エーテル」についても詳しく知ることができる。(C)2010‐2021 SQUARE ENIX CO,LTD.ALL Rights Reserved.
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――ファンタジーであっても、現実世界の法則に近づけた方が、よりリアルに感じられるということですね。

 そうですね。直感的な理解しやすさと、理屈に基づいたリアリティのバランスには気を使っています。「中世ヨーロッパ風のファンタジー世界」と聞けば、何となく剣を持った騎士が城を背景にドラゴンと戦っているようなイメージが浮かぶと思いますが、『FF14』ではこのように多くの方が理解できるファンタジーの普遍性を尊重しています。しかし、ファンタジーなら何でもアリというわけではありません。本作のプレイヤーは幅広い年齢層にわたっていますが、特に20代後半から30代にかけて層が厚いんです。そこで「大人」が遊ぶに値するだけのリアリティを担保することも重要だと考え、現実世界のエッセンスを借りて、アイディアを練る試みも取り入れています。

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