世界の女性は今「女として生きること」をどう考えているのか、4人の証言
3月8日は国連が定めた「国際女性デー」。2022年は「持続可能な明日に向けて、ジェンダー平等をいま」をテーマとして掲げている。現代社会の中で「女性である」ことは、何が課せられていて、どう感じているのか。実際に女性の声を集めたプロジェクトから、それが見えてくる。
「彼女たちは、話す必要があった。正確には、話を聞いてもらう必要があった」
ウクライナ出身の映像ジャーナリストのアナスタシア・ミコバと、フランス生まれの世界的写真家で映像監督のヤン・アルテュス=ベルトランは、ある作品で女性たちにインタビューをおこなった際に、堰(せき)を切ったように語りだす姿を見て、女性たちの話を聞くべきだと悟った。
「ウーマン・プロジェクト」を立ち上げた2人は、世界50の国・地域で、実に2000人へのインタビューを実施し、映画と書籍にまとめた。フランスで刊行された書籍『Woman』はおよそ60人のインタビューを掲載している。その日本語訳である『話すことを選んだ女性たち 60人の社会・性・家・自立・暴力』(日経ナショナル ジオグラフィック社)が3月上旬に発売となった。
「ウーマン・プロジェクト」は、国も社会も立場も考え方も異なる多くの女性から話を聞くことで、現代社会で「女として生きるとはどういうことか」を見通す試みだ。一つとして同じではない声を重ねることで、日々の制約、社会的な苦境、暴力被害、自立、性、結婚制度、出産などにまつわる問題や葛藤が見えてくる。
女性らしさとは何なのか? 女性に対する伝統的な価値観とどう向き合うのか? 書籍からフランス、米国、ロシア、韓国に暮らす4人の女性の声を紹介する。
ビオレット(フランス)

女の典型的な1日は、まるで政府の閣僚のスケジュールみたい。考えなきゃならないことは2万個くらいある。朝は「脱毛はちゃんとできているかな、今晩デートだから」。クローゼットを開ければ「今日は何を着よう」。仕事に行くにはきちんとした格好をしなくちゃならない。それに他人に隙を与えないように、いつも完璧な自信を保つことも大切。メトロに乗れば「この人、私のお尻を触ろうとしているのかも」と身構える。やっとオフィスに着けば、性差別について考えさせられるような出来事の連続。夕方には、いったん家に帰ってメイクをしなおして、仕事で嫌なことなど何もなかったような顔をしてデートに出かける。というわけで、女は一瞬も休んでなんかいられない。
おすすめ関連書籍
60人の社会・性・家・自立・暴力
「女として生きるとはどういうことか」 50の国・地域、2000人に取材するプロジェクト
定価:3,080円(税込)
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