第78回 幸福を招くインドネシアの「黄色いごはん」

 スタミさんが話してくれたのは故郷で挙げた日本人のご主人との結婚式の思い出だ。「結婚式のナシトゥンパンは私のお母さんがお祝いにつくってくれたものでした。それを夫婦で食べさせ合うんです。これからの人生、2人で幸せになろうと願って。お母さんの愛情も感じられる忘れられない瞬間でした」

 まるで、ウェディングケーキのファーストバイト。しかも、母親の手づくりナシトゥンパンで。インドネシアでは小さな頃から母の手伝いをして料理を覚え、味を受け継いでいくという。今はインスタントを使う家庭も増えているそうだが、合わせ調味料やソースにも家庭の味があるそうだ。両親がナシクニンを新郎新婦に食べさせる場合もあるようで、黄色いごはんがぎゅっとしているのは親の愛情がつまっているからなのかもしれない。

 この日は私にとって何でもない日だった。しかし、何もないこともまた幸せなのだと思い直してナシトゥンパンの頂上部分を自ら切り取っていただいた。ゆっくりとその甘みをかみしめていたら、なんだか久々に母のお赤飯が食べたくなった。

左から大平あきさん、ご主人の正樹さん、加藤スタミさん。スタミさんはのジャワ島東部の都市マランの出身。結婚後、来日してチャベのオープン時から料理人を務める
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cabe(チャベ 目黒店)
東京都品川区上大崎3-5-4 第1田中ビル2階
電話:03-6432-5748
ホームページ:https://www.facebook.com/IndonesianRestaurantCabeMeguro

中川明紀(なかがわ あき)

講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。何事も経験がモットーで暇さえあれば国内外を歩いて回る。思い出の味はスリランカで現地の友人と出かけたピクニックのお弁当とおばあちゃんのお雑煮