第78回 幸福を招くインドネシアの「黄色いごはん」
一方のボロブドゥルは階段ピラミッドのようなかたちをした世界有数の仏教寺院遺跡群で、ユネスコの世界遺産にも登録されている。つまり、ナシクニンを階段ピラミッドのようにかたちづくるということだ。高度な技術が必要だなあ、と思いながらナシトゥンパンを崩さないよう、麓のほうを一口いただく。
ふわっと漂うココナッツの風味。もち米はぎゅうっと弾力があり、ココナッツの甘みとほのかな塩気が相まって味わい深い。素朴に見えて奥行きのある味に感心していたが、材料のちょっとした量の加減や蒸し時間で味や食感ががらりと変わる調理の難しいものだという。
ナシクニンを味わったところで、次は周りを彩るおかずだ。「おかずの種類や数は決まっていません。今日はチキンのバリソース煮、ミーゴレン、玉子焼き、ポテト、テンペ。一般的なナシクニンのおかずです」とスタミさんが教えてくれた。バリソースとはピリ辛なソースで、ミーゴレンはいわゆる焼きそば。いずれもインドネシアではポピュラーなものだ。
「主役の好みや催しの内容にあわせておかずはさまざま。豪華なパーティーだと種類が増えたり、高価な料理になったりします。ただ、テンペはだいたい入っていますね」と大平さんが言った。テンペとは茹でた大豆を発酵させた食品。16世紀ごろにジャワ島でつくられはじめ、インドネシア人は毎日のように食べるという国民食の一つだ。
良質なたんぱく質のほかビタミンやミネラルも豊富で、近年はスーパーフードとして世界中で注目を浴びている。日本には「インドネシアの納豆」として製造する企業もあるほどだ。ちなみにインドネシアには豆腐や醤油もあるそうで、日本と似た食文化に親近感が湧く。
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