第78回 幸福を招くインドネシアの「黄色いごはん」

 その声に振り向くと、加藤スタミさんが大きなお皿を運んでくるところだった。スタミさんは店の料理を担当しているインドネシア出身の女性だ。そして、ナシクニンと呼ばれる料理が私の目の前に置かれると、私は思わず「おお……」と感嘆の声をあげていた。

 まず驚いたのは色だ。インドネシア語でナシは「ごはん」、クニンは「黄色」を意味するとおり鮮やかな黄色いもち米のごはん。もち米は共通しているものの、インドネシアの祝い飯は赤ではなく黄色だった。日本で赤は古くから邪気をはらう力があると考えられてきたが、インドネシアで黄色は幸運や繁栄を象徴するらしい。

「ナシクニンはもち米をターメリックとココナッツミルクで炊いたものです」とスタミさん。香りづけにレモングラスやコブカミンなどのハーブも使うそうだ。

 しかし、興味深いのは色だけではない。かたちもおもしろかった。ナシクニンはなんと高さ20センチ以上もある美しい円錐形にかたどられていたのだ。そして、周囲におかずや飾り切りをした野菜、花が添えられている。何とも華やかで、これは確かに気分が上がるぞ。

「円錐状にしたナシクニンは、ナシトゥンパン(ナシトゥンペンとも)と言います。インドネシアでは神聖なものである山を表しているのです」とスタミさんはいう。竹で編んだククサンという円錐形の蒸し器にもち米をつめて成型するそうで、最近はアルミの型も多いらしい。

「山型が伝統的ですが決まりはなく、少し前はボロブドゥル型が本国で流行っていました。ハート型のナシクニンを見たこともあります」と大平さんは笑う。黄色いハートって、なんかもう幸せがあふれ出てそうです。

ナシクニンを山型にしたナシトゥンパン。飾り付けはつくり手の腕とインスピレーション次第だ
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