第56回 ラーメンのルーツはウイグル料理にあり?!

 切った食材を熱した中華鍋に入れると、ジュッといい音がした。鍋を振るほどに炎が勢いよく舞い上がる。味付けはトマトに塩、唐辛子、ニンニク、ショウガ、そのほか様々な調味料を入れていく。ここはプロの腕によるところだが、一般的にトマトと塩がベースになるようだ。最後に煮込むが水気は少なく、スープというより「あん」のほうが近いかもしれない。

 茹でた麺にあんをかけて、ラグメンが完成した。酸味と甘みが相まったあんのにおいに胃袋を刺激され、熱々の出来立てをさっそくいただく。茹で上がった麺は白くやわらかそうに見えるが、口に入れて驚いた。モチモチと弾力に富み、なんとも食べごたえのある麺なのだ。そこにピリ辛でコクのあるあんがよく絡む。野菜の甘み、肉のうま味、さまざまな味が折り重なった奥深い味に思わず汁を飛ばしながらすすりこむ。

 あ、音を出してすすっていいのかな。ふと思って尋ねると、「そこは自由です」とグプルジャンさん。それではと遠慮なくいかせてもらった。だがしかし、すすってもすすっても麺の終わりがやってこない。「この麺、長過ぎませんか?」。口いっぱいに麺をほおばりながら言うと、グプルジャンさんは笑って答えた。

「麺打ちのあとに切りませんからね。人間の腸の長さと同じだと言われているんですよ」。腸って、大腸でも1.5メートルくらいあるんじゃ……。これはゴールが見えないわけだと、おとなしく噛み切って食べることにする。

 それにしても、おもしろいのはハラルフードなのに作り方や見た目、味は中華に近いこと。ウイグルは東西文化の交差点なのだなあとしみじみ思う。しかし、そんな私にグプルジャンさんは「純粋なウイグル料理ですよ」と言った。そして、「ラグメンがラーメンのルーツですからね」と繰り返す。

 そうそう、それが目的だった。麺の発祥地は中国だといわれている。西アジア説など諸説あるのだが、10年ほど前にウイグルの東隣りの青海省で約4000年前の手延べ麺の化石が発見された。もっともこれはアワとキビでつくった麺で、小麦麺となるともっと時代が下るのだが、「穀物の粉を練った生地を使うものは麺」という中国の考え方に沿うと、現在では最古の麺となる。また、包丁などの道具がない時代であるから、手延べ麺は麺づくりの原初的な方法だといえる。

これがおよそ1人分。ラグメンのあんのベースにはトマトのほか、乾燥させた赤パプリカを使うことも
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