第56回 ラーメンのルーツはウイグル料理にあり?!
ウイグルにラーメンのルーツという料理があるらしいよ。
そんな話を聞いたのは秋の終わり頃。前回のキルギスの麺料理「ベシュバルマク」(第55回参照)について食通の友人と話していた時に、「そういえば……」とその友人が教えてくれたのだ。ウイグルとは、キルギスと国境を接する中国の新疆ウイグル自治区のこと。トルコ系イスラム教徒のウイグル族が大半を占める中国西端の民族自治区域だ。
以前、山西省の麺料理を紹介した際に日本のラーメンが横浜中華街から広まったという話に触れたが(第51回参照)、これをさらにたどっていくと広大な中国を横断することになる。いわば、ラーメンロード。本当であれば、なんとロマンあふれる道だろうか。ウイグルの料理に興味が湧いた私は数日後、東京・西新宿に立っていた。
甲州街道から小道を少し入ったところにあるウイグル料理の店「シルクロード・タリム」。扉を開けると、シェフでウイグル族のグプルジャンさんが笑顔で迎えてくれた。グプルジャンさんは中国の労働・社会保障部認定の調理師資格、つまり中国の調理師免許を持ち、ウイグルの首府・ウルムチの一流ホテルで腕を振るっていたという。ウイグル料理の店は日本に3~4軒あるそうだが、プロの調理師がいるのはここだけらしい。
メニューには餃子もあるが、ケバブ(カワプ)もある。ウズベキスタンのプロフ(第37回参照)によく似たポロというご飯ものもあるので、料理は中央アジアに近いのかなと思いながら、「ウイグルにラーメンの元祖という料理があると聞いたのですが……」と、単刀直入に聞く。するとグプルジャンさん、「あるよ!」と威勢よく返事をしたあと、こう続けた。
「ラグメンですね」
「世界魂食紀行 ソウルフード巡礼の旅」最新記事
バックナンバー一覧へ- 最終回 神奈川いちょう団地でベトナム料理を食べ歩き
- 第85回 具材は挟んで載せて ベネズエラのアレパ
- 第84回 パキスタンのおふくろの味、アチャリカレー
- 第83回 労働を忘れ心を整えるユダヤ教安息日の食卓
- 第82回 夜通し続くルーマニアの結婚式、招待客の腹を満たす「サルマーレ」を食べてみた
- 第81回 ビールが進む!「種」を使ったソースでつくる、アフリカ・トーゴの国民食とは
- 第80回 キューバの豆料理から見えてきた、社会主義国の食卓事情
- 第79回 サウナ以上に愛すべき存在?!フィンランドの国民食
- 第78回 幸福を招くインドネシアの「黄色いごはん」
- 第77回 アルゼンチンの英雄、メッシが愛する料理「ミラネッサ」とは?