第85回 具材は挟んで載せて ベネズエラのアレパ
よく煮込まれたカルネ・メチャーダは、やわらかな牛肉に野菜やスパイスの風味が折り重なったふくよかで深みのある味わい。その旨みたっぷりの汁を吸ったアレパはトウモロコシのふわっと甘い風味も相まって、かみしめるたびに幸福感に満たされていく。
「久々に食べたけど美味しいなあ。そういえば、アレパは揚げたりもしますよね」と関さん。その問いにジャネットさんが答える。「アレパフリータね。トウモロコシ粉を使った料理は他にもあって、例えばカチャパという少し甘いパンケーキは子どもが大好き。クリスマスにはアジャカをつくります。肉や野菜をトウモロコシ粉の生地で包んで、バナナの皮でくるみ、1時間くらい蒸したちょっと手の込んだ料理です」
「アジャカの見た目はちまきに似てますね」と関さんが例える。トウモロコシ粉の種類もいろいろあって料理によって使い分けているらしい。ベネズエラの食卓に欠かせないものなんだなあ。そんなことを思いながらアレパをパクついていると、ジャネットさんがしみじみといった。
「ああ、でもやっぱりこのP.A.N.の粉が一番美味しい。ベネズエラにいるおかあさんに食べさせてあげたいわ」
えっ、毎朝のように食べるって言ってたのに、どういうこと? 不思議がる私にジャネットさんが話し出す。
「P.A.N.の粉はアメリカでつくられているけれど、製造元は『ポラール』というベネズエラ最大の食品メーカー。ここが1960年に国内で初めてトウモロコシ粉を発売したんです。そしたら、トウモロコシをすり潰す作業がなくなって家事が楽になると大ヒット。でもね……」
「世界魂食紀行 ソウルフード巡礼の旅」最新記事
バックナンバー一覧へ- 第85回 具材は挟んで載せて ベネズエラのアレパ
- 第84回 パキスタンのおふくろの味、アチャリカレー
- 第83回 労働を忘れ心を整えるユダヤ教安息日の食卓
- 第82回 夜通し続くルーマニアの結婚式、招待客の腹を満たす「サルマーレ」を食べてみた
- 第81回 ビールが進む!「種」を使ったソースでつくる、アフリカ・トーゴの国民食とは
- 第80回 キューバの豆料理から見えてきた、社会主義国の食卓事情
- 第79回 サウナ以上に愛すべき存在?!フィンランドの国民食
- 第78回 幸福を招くインドネシアの「黄色いごはん」
- 第77回 アルゼンチンの英雄、メッシが愛する料理「ミラネッサ」とは?
- 第76回 トルコ版「味噌」? 原料はあの野菜