「ジャミードという乾燥ヨーグルトを溶かしたソースで煮込んだラム肉を、スパイスで炊いたライスにかけています。ライスの下にはシュラクというクレープのように薄いパンを敷き詰めるんですよ」

 パレスチナをはじめ周辺国で食べられ、ヨルダンでも国民的な料理とされているマンサフは、アラビア半島の砂漠地帯に住む民族「ベドウィン」の料理の流れを汲んでいるといわれる。遊牧民である彼らにとって羊も乳製品であるヨーグルトも欠かせない食材だ。

ビサンのメニューには「ヨーグルトのマンサフ」と表記されているスタンダードなマンサフ。ラム肉の上にはナッツやコリアンダーをまぶしている(写真提供=ビサン)
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「マンサフとは『大きな皿』という意味。パレスチナではお祝いの時によく食べます。結婚式の際には必ずといっていいほど出席者に振る舞われますが、パレスチナでは町中の人が参列するので1500人以上集まることも珍しくない。だからつくるのが大変なんです。今は専門の業者が調理しているけれど、羊も40頭くらい用意するんですよ。できあがったマンサフは大皿に盛って8人くらいで囲み、一緒に食べるんです」

 1500人とはすごい規模だが、ハレの日に料理をみんなで囲むのは幸せを分かち合うようでいいなあ、と思う。しかし、そうすると私が食べたマンサフは何なのか。

「これは僕の実家、マンスール家のマンサフなんです」

 私の問いにそう答えて、スドゥキさんは相好を崩した。「僕は11人兄弟と人数が多く家も貧しかったので、高価なラム肉はなかなか食べられませんでした。そこで僕らがマンサフを食べたいというと、お母さんは鶏肉のマンサフをつくってくれたんです。鶏肉をより美味しく食べられるようにとヨーグルトよりもスパイスを多めに使って。兄弟はみんなお母さんのマンサフが大好きで月に3回くらい食べていましたよ」

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