「マンサフです。僕はこのマンサフを食べると特に強く故郷の家族を思い出すんです」

 大きめのお皿には茶色の米料理がきれいな楕円形に盛り付けられていた。「例えていうなら炒飯ですね」というスドゥキさんの言葉に納得しながら、スプーンですくってぱくり。たちまち口の中にスパイスの風味が広がった。辛くはないのだが鼻にスーッと抜けるような芳醇な香り。企業秘密とのことだが18種類ものスパイスをブレンドしているという。

 そこに鶏肉、タマネギ、ニンジン、ピーマン、それからシイタケのようなキノコといった具が米と絡み合い、絶妙な旨みを醸し出す。加えてトマトベースのソースがまろやかさを、トッピングのトマトとコリアンダーがさっぱり感をプラス。スパイスがきいているのにどことなくやさしさを感じる味わいで、飽くことなくあっという間に半分を平らげてしまった。

これがスドゥキさんが出してくれたマンサフ。パレスチナでは米料理は夕食に出ることが多い。朝食はファラフェルやホンムスなど軽めのものを食べ、昼はケバブなどの肉料理(米料理を食べることも)が中心になるという
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 確かに炒飯のようにいい意味で飾り気がなく、身近に感じられる料理だ。しかし、このマンサフに強く家族を感じるポイントはどこにあるのだろうか。スドゥキさんに尋ねる。

「実は、一般的なマンサフとは見た目も作り方もまったく違うんです」

 答えに対して怪訝な顔をする私にスドゥキさんはメニューを指さした。そこにはサフランライスのように黄色く炊いたライスにホワイトソースを絡めた肉を盛りつけた料理が写っていた。いま食べたマンサフとは違う料理に見えるが、「これが一般的なマンサフです」とスドゥキさんはいう。

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