第72回 愛と知恵が詰まったパレスチナおふくろの味
マンサフ自体は鶏肉や山羊肉でつくることもあるらしい。しかし、つくる過程もまるで違う。つまり、スドゥキさんの母のオリジナルマンサフなのだ。聞けば、スドゥキさんが料理を覚え、日本で店を開くことになったのも母の味を求める思いがあったからだという。
11人兄弟の7番目として生まれ育ったスドゥキさんは家計を助けるため、14歳の時に家を出てイスラエルの養鶏場で働き始めた。従業員のまとめ役を任せられるなど仕事は充実していたが、家族と離れて暮らしていると恋しくなるのは母の料理。そこで帰省するたびにキッチンに入って手伝いをしながら母の味を覚え、自分でつくるようになったという。
その後、パレスチナとイスラエル間の情勢が悪化したためパレスチナに戻ったスドゥキさんは、当時日本で働いていた8歳上の兄に誘われて2005年に来日。遊びにきたつもりだったが日本の風景や人々の温かさに魅せられて、この地で暮らしたいと思うようになった。
「最初は兄の仕事を手伝っていたけれど、自立しようと内装や塗装の仕事をするようになりました。そこで知り合った仲間にパレスチナの料理を振る舞うととても喜ばれてうれしかった。そうするうちに、お店を開いてもっとたくさんの人に母のパレスチナ料理を食べてもらいたいと思うようになったんです」
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