第71回 「東十条」は南アジアの交差点

「町のいたるところで売られていて、小腹が空くと買って食べたりします。日本のたこ焼きに近い感覚ですね」とカウサルさん。シンガラはジャガイモたっぷりで腹持ちもよさそうだ。あれ、でもこれ、インドでポピュラーなスナックのサモサに似てるな。

「シンガラとサモサは同じですよ。インドでいうサモサをシンガラというんです。違いをあげるとしたら……伝統的なシンガラには生地にニゲラという黒い粒のスパイスが練り込まれていることかな」

 おっとまたしてもインドと同じ。ちなみに、パキスタンもサモサというらしい。なぜ、バングラデシュではサモサといわないのだろうか。そう問うと、カウサルさんは「バングラデシュでサモサというと違う料理なんですよ」という。今日の料理はなんだかややこしい。店のメニューにバングラデシュのサモサはないが時々置いているそうで、この日はあるといって出してくれた。

 目の前に出されたのはシンガラより小さい三角形の揚げ物。同じく具を小麦粉の皮で包んでいるが、春巻きの皮のように薄くてパリパリだ。中の具はやはりカレー味で細かく潰されているからかよくわからないが肉や野菜で、ジャガイモは入っていないらしい。

ラマダン(イスラム教の断食月)の日没後の食事イフタールでサモサを食べたりするとカウサルさん。イフタールの時に店に来るイスラム教徒に配ったりもするそうだ
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「サモサもシンガラも油で揚げるのは同じだけれど、大きさや包み方、具が違うんです。シンガラのほうがよく食べるけれど、サモサも町中で売られているスナックの一つですよ」

 サモサというとインドのサモサをついイメージしてしまうが、バングラデシュで食べることがあったら間違えないようにせねば。もともとインドのサモサは14世紀の初め頃に中央アジアから伝わったといわれている。時代は異なるものの、この料理もまたイスラムの流れを汲むものだ。