第71回 「東十条」は南アジアの交差点

オーナーのカウサルさん。「バングラデシュもインドも料理に大きな違いはないから、どちらの人もよくきます」
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 ハイデラーバードのビリヤニはインド全域で食べられている最もポピュラーなビリヤニで、香辛料に漬け込んだ肉と軽くゆでた米を重ねて炊くそう。一方、バングラデシュも重ねるのは同じだが(何層になる場合もある)、米を油で軽く炒めてから香辛料で煮込んだ肉と炊き込むらしい。私にはあまり違いがわからないけれど、バングラデシュのビリヤニはもっと色が白っぽいそうだ。

「同じハラール料理だから、ハイデラーバードのビリヤニもうちに来るバングラデシュ人は好んで食べていますよ」とカウサルさん。バングラデシュのビリヤニはメニューにないのかと問うと、毎週金曜日につくっているという。「イスラム教徒は金曜の正午にお祈りします。お祈りが終わるとみんな店に来るんです。だいたい20人くらいかな」

 店の近くにモスクもあるそうだ。バングラデシュでは金曜にビリヤニを食べると決まっているのだろうか。そう聞くと、カウサルさんは首を横に振る。「普段の日も食べますよ。でも、南アジアのイスラム教徒にとって結婚式など特別な日には欠かせない料理なんです」

 この日は金曜でなかったため、バングラデシュのビリヤニの代わりにもう一品いただくことにした。カウサルさんにソウルフードを尋ねると、バングラデシュ人シェフと会話を交わしてから答えてくれた。

「いろいろあるけれど、シンガラはスナックとして人気です。ジャガイモや豆、肉などを小麦粉でつくった皮で包んで揚げたものです」

 さっそくオーダーする。出てきたのは小学生のこぶし大くらいの揚げもの。生地は厚めだがサクサクで中にカレー味のジャガイモやグリンピース、コーンなどが入っている。ホクホクのジャガイモは甘みがあってまろやかだが、辛さもしっかりしていて、添えられていたケチャップが実に合う。

シンガラ。店のメニューには日本人にもわかりやすいよう「サモサ」と書かれているのでご注意
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粗くマッシュしたジャガイモがボリューム満点のシンガラ。「シンガラもサモサもおかあさんやおばあさんはつくっていたけど、いまはほとんどの人が店で買うのでは」とカウサルさん
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