第77回 アルゼンチンの英雄、メッシが愛する料理「ミラネッサ」とは?

「そう、そのミラノに由来します。ミラネッサはイタリア料理がベースになっている。アルゼンチンはイタリア移民が多いんです」。私の疑問に和美さんが答えてくれた。アルゼンチンは19世紀半ばまでは人口200万人に満たない小規模な国だった。そこで政府が19世紀後半から20世紀初頭にかけてヨーロッパからの移民を積極的に誘致。結果、イタリア・スペイン系が人口の97パーセントを占める移民国家となった。

 イタリア系移民が多い理由はイタリアが統一した1861年以降の移民政策によるもので、当時は出稼ぎを目的に海を渡る者も多かったという。その一部が帰国することなくアルゼンチンやアメリカに定住した。ちなみにアニメ「母をたずねて三千里」は、イタリアの少年マルコが出稼ぎに出たまま音信不通となった母親を探しにアルゼンチンへと向かう物語である。アニメの記憶はおぼろげだけれども、マルコもミラネッサを食べたんだろうなあ。

「公用語はスペイン語ですが、イタリア語もけっこう使われています。ミラネッサだけではなくラザーニャやニョッキもよく食べますよ。特にニョッキは毎月29日に食卓に出る料理。安く手に入るジャガイモと小麦粉でつくれるから月末の給料日前の定番なんです。お皿の下にお金を置いて、来月も食べられますようにって祈るんですよ」

 ミラネッサは、日本では「ミラノ風カツレツ」と呼ばれるイタリア料理「コトレッタ・アッラ・ミラネーゼ」がベースだ。仔牛の肉を叩いてのばし、小麦粉、卵、パン粉でつくる衣をつけて炒め揚げしたもので、移民とともに海を渡って「ミラネッサ」と親しまれるようになった。ルーツだけでなく望郷の思いも込められた名前なのかもしれない。

「アルゼンチンのミラネッサには大きく2種類あって、一つがこのチミチュリという緑のソースをかけたもの。もう一つがトマトソースとトロトロのチーズをのせたものでミラネッサ・ナポリターナと言われています」と和美さん。ミラネッサ・ナポリターナはさらにハムをのせたりもする。メッシは母がつくるナポリターナが一番の好物らしく、確かにボリューム満点で活力もみなぎりそうだ。

 だが、和美さんの話ではチミチュリのほうが定番らしい。そうそうこのチミチュリ、とてもさっぱりしていて酸味があり、揚げ物の油っこさをほどよく和らげるうえ食欲を刺激してくる。