第77回 アルゼンチンの英雄、メッシが愛する料理「ミラネッサ」とは?

 アサードとは鉄網の上で豪快に肉を焼くアルゼンチンの伝統料理。ざっくり言えばバーベキューのことだ。一説では、バーベキューはヨーロッパからの移民が始まった15世紀末期以降のアメリカ大陸で発展した料理で、以前にもブラジルのシュラスコ(第26回参照)やアメリカのバーベキュー(第47回参照)を紹介している。国によって特徴はあるようだが、週末の食事やパーティーで家族や友人と大勢で楽しむことは共通しているらしい。

 では、アルゼンチンの人たちが日常的に好んで食べるというミラネッサはどのような料理なのか。さっそくいただくことにした。オープンキッチンからジュワーッと油で何かを揚げる音。そして漂ってくる香ばしいにおい。わくわくする私に、「どうぞ」と和美さんが出してくれたミラネッサを見て思わず言葉がこぼれた。

アルゼンチングリルのミラネッサはやわらかく旨みたっぷりのイチボを利用。部位は決まっておらず、家庭によっては安い牛肉を叩いてやわらかくしたりする。昼に食べることが多いそうだ
[画像のクリックで拡大表示]

「あれ、トンカツ?」

 目の前にあるのはカラッと揚がった衣に包まれたわらじ形の肉。野菜を刻んだような緑のソースがかけられているものの、どう見てもトンカツだ。しかし、「似ているけれど違います。熱々が美味しいので食べてみて」と和美さんに言われ、口にいれる。サクッとした衣の音が小気味いい。弾力がある肉は甘みがあり、かむほどに肉汁が豊かに広がった。

「トンじゃない。ギュウですね!」

 そう、ミラネッサは牛肉にパン粉の衣をつけて揚げた料理なのだ。農畜産業振興機構によるとアルゼンチンは世界第6位の牛肉生産国で、国民1人当たりの消費量も58.5キロと日本の9倍以上におよぶ。アルゼンチン人にとって牛肉は食卓に欠かせない食材なのである。

「私は魚や鶏肉はあまり食べないんですが、牛肉だけはやめられない。小さい頃からよく食べていたから、食べるのをやめると身体がだるくなって調子がでないんです」と和美さん。まさに身体の血となり肉となっているわけだ。

 しかし、アルゼンチンなのになぜ「ミラネッサ」なのだろう。この名を聞いてまず思い浮かぶのはイタリアの都市ミラノだ。