第55回 豪快に手づかみで食べる、「五本の指」なるキルギスの伝統料理

インナさんの故郷は首都ビシュケクから車で1時間ほどのカラバルタ。現地で知り合った日本人男性と結婚して2000年に来日した
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 しかし、ソビエト連邦が成立してスターリンの時代になると、定住化政策とともに朝鮮人やドイツ人、トルコ人などソ連の敵国となりかねない国の移民の強制移住が行われた。「私たちの場合は、日本のスパイが紛れ込むことを恐れたようです。そして、いまのキルギスやカザフスタンなど中央アジアに住まわされたのです」。インナさんの先祖は大変な思いをして移住を重ねてきたのだ。

 彼らは民族のアイデンティティを大事にし、結婚も同族間で行われていたとインナさんはいう。「いまはだいぶゆるやかで民族の壁はありません。ただ、『誘拐婚』については疑問に思っています」とインナさん。誘拐婚とは、男性が気に入った女性を強制的に連れ帰り、結婚するというキルギスの風習だ。

「諸説あるようですが、もともとは、男性が婚約者の家に迎えに行くロシアの結婚の風習をまねたのが始まりと聞いています。それが主に農村部の男性がお嫁さんを見つけるための手段としてゆがんでしまったみたい。奥さんを働き手としてしか考えてないんじゃないかしら。女性もなぜ承諾してしまうのか、本当に不思議です」

 一方で、キルギス社会は一般的には離婚に寛容らしい。暮らしてみないと相性はわからないのだから、合わなければ別れればいいという考えで、離婚は汚点にならず、何度も結婚と離婚をくり返す人もよくいるのだとか。誘拐婚とのギャップがすごい。私が驚いていると、「そうそう、ロシアのお菓子があるのでいかが?」とインナさん。ほかにも日本との子育てや親戚づきあいの違いなど、話題はつきることがなく、なんだか“女子会”のような気分で盛り上がってしまった。

 日本はパーティーが少ないからさみしいと言うインナさん。キルギスのパーティーってこんな感じなのかな。ベシュバルマクでいっぱいになったお腹をさすりながら、時間が許すまで食後のおしゃべりタイムを楽しんだ。

町の祭りで出したキルギス料理が人気だったことがきっかけで店をオープン。店内にはキルギスやロシアの人形、置物も並ぶ
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インナカリンカ
埼玉県川口市芝新町2-19 高井ビル101
電話:048-487-9519
ホームページ:http://innakalinka.com/

中川明紀(なかがわ あき)

講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。何事も経験がモットーで暇さえあれば国内外を歩いて回る。思い出の味はスリランカで現地の友人と出かけたピクニックのお弁当とおばあちゃんのお雑煮