第84回 パキスタンのおふくろの味、アチャリカレー

ザヒット・ジャベイドさんは、東日本大震災の際には被災地で料理を振舞った
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「アチャリのカレーがなぜ人気かというとね、おふくろの味だからなんです。いまは瓶詰が手軽に買えるようになったけれど、ちょっと前まではどこの家でも自分たちでアチャリをつくっていました。ダイコンやニンジン、シシトウ、マンゴーなど好きな食材を、オイルや香辛料などで漬ける。オイルは菜の花オイルが基本だけど、香辛料は家庭ごとに違うはず。そのアチャリでつくるカレーはやっぱりちょっと特別です」

 ザヒットさんのお母さんは出かける時のお弁当にアチャリカレーをよくつくってくれたそうだ。パキスタンの人たちはみんな、それぞれの思い出を持っているから、実家に戻るとアチャリのカレーを食べるのだとザヒットさんは言う。そして、なかなか実家の味にありつけない在日のパキスタン人にとっては、「カラチの空」のアチャリカレーは懐かしさを感じる料理なのだろう。

 そういえば、店名の由来はなんだろう。カラチはシンド州にあるパキスタン最大の都市。ザヒットさんの出身地であるファイサラーバードとはかなり離れている。

「ここはもともと他の人が始めた店で、僕は2010年に譲り受けたんです」

 ザヒットさんが振り返る。来日したのは80年代、18歳の時のこと。以来、神奈川・横浜の電子機器会社に22年間勤め、2005年に一度帰国した。夢だったレストランを開くためだ。

「僕は1996年にパキスタンの女性と結婚し、日本で新婚生活を始めました。ところが、当時は食材も手に入りにくいし、パキスタン料理店はどこも日本人向け。母国の味が恋しくなった奥さんは数年でパキスタンに戻ってしまったんです。それから僕はずっと“単身赴任”で、帰国して家族と暮らしながらお店をやろうと思ったのです」