第47回 米国では初対面の人とBBQの話はNG!?

 豪快に手で食べるのが美味しい、というレイチェルさんの言葉通り、手を伸ばして肉をつかむ。ベイビーバックリブという豚の背中の骨付き肉で比較的やわらかい部位ではあるものの、それでも口に入れると思わずうなってしまった。ほろほろと崩れるほどの仕上がりだったからだ。しかも、滋味深い味わいで、時間をかけてつくっていることは容易にうかがえる。

「しっかりと味付けされているんですね」と私が言うと、「この味付けやソースこそが地域ごとに特徴的なんです」とレイチェルさん。味付けでいえば、バーベキューの本場である南部地域はトマトやビネガーをベースにしたソースに漬けたり、塗ったりすることが多いが、中西部は塩コショウ、ハーブなどを肉にすり込む調理法を好むのだという。

「同じ南部でもテキサス州ではトマトベース、大西洋沿岸のノースカロライナ州、サウスカロライナ州ではビネガーベースと、ソースの種類が異なります。さらにいえば、家庭によってレシピが違う。近年は醤油やワサビを使う人もいたり、すごくバラエティに富んでいるんです」

 聞けば、アメリカには「初めて会う人との話題に選んではいけないもの。それは政治、宗教、そしてバーベキューだ」という社交場についてのジョークがあるそうだ。論争が巻き起こる可能性があるほど、アメリカの人びとはバーベキューにこだわりを持っているということか。

「大勢でバーベキューパーティーをするときにはコンテストを開いて、味を競ったりもします。南部のほうでは町単位、州単位のコンテストも開催されているんですよ」。バーベキューを取り仕切る人をピットマスターというが、バーベキュー協会が認定するピットマスターもいるらしい。アメリカ人のバーベキューに対する意気込み、半端ない。

テキサスにある人気のバーベキュー専門店「THE SALT LICK」の厨房の様子(写真提供=テキサス政府観光局)
テキサスにある人気のバーベキュー専門店「THE SALT LICK」の厨房の様子(写真提供=テキサス政府観光局)
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