第54回 火花を散らす、中東の“ホモス・ウォー”
まさか、道路の向こうに“中東のパリ”があるとは……。
夏真っ盛りのある日、マダガスカル料理を食べに東京・お茶の水を訪れていた私(第53回参照)。心地よい満腹感に浸りながら店を出て腹ごなしに道を歩いていると、道路の反対側に佇む一軒の店が目に留まった。
1階も2階もガラス張りのオシャレな外観なのだが、店頭に掲げられている料理の写真から感じるのは異国の情緒。ソウルフードアンテナが反応した私は小走りで横断歩道を渡り、店の前に立った。
「ADONYS(アドニス)」というのが店の名前らしい。その下には「レバノン料理」の文字。しかも、レストランというよりはお客さんがレジカウンターで注文し、料理を受け取ってテーブルに座る、いわゆるファストフード店のようだ。これはおもしろい。さすがに食べたばっかりで満腹な私は、後日お腹をすかせて訪ねることにした。
レバノン共和国は地中海に面した中東の小国。西欧風の建物が立ち並ぶ首都ベイルートは、その美しさから“中東のパリ”と呼ばれている。数日後、改めて店の前に立つと、白と黒を基調にオレンジでアクセントを効かせたアドニスの店構えにも、洗練された雰囲気が漂っていた。
「いらっしゃいませ」
レジカウンターで応対してくれたのはカッセム・ハッシュハサンさん。6月に来日したばかりのレバノン人だ。メインメニューはハンバーガーならぬラップサンドで、鶏肉や牛肉を巻いた5種類が並ぶ。それにポテトやサラダなどのサイドメニュー、ドリンクのセットで頼む人が多いようだ。さっそくおすすめを尋ねる。
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