保温調理器の上にはハミンが載っていた
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 なるほど、カメラも機械だ。さらに、「火をつける行為」と解釈されることから電気のスイッチを入れることもできないため、シャバットの間は照明をつけっ放しにしておくそうだ。徹底したデジタル・デトックスである。

「イスラエルでは、金曜日は日が落ちる前に交通機関が止まります。前に訪れたとき、15時過ぎにショッピングセンターからバスでホテルに帰ろうとしたら、すでに止まっていて困りました。アラブ人(ユダヤ教徒ではない)が運転するタクシーを探して何とか帰りましたよ」と友人の一人が振り返る。

 だが、金曜の夕食はともかく、土曜の朝食や昼食はどうするのだろうか。たとえ夕食の残りを食べるにしても温めることもできないなんて、せっかくの安息日なのにちょっと切ないじゃないか……。

「事前にハミンなどをつくっておいて、電源を入れっ放しにした保温調理器にかけておくので、土曜の朝も昼も温かい料理を食べることができるんですよ」

 私の疑問にビンヨミンさんはそう答えて、平たい保温調理器の上に載っている鍋のフタを開けて見せてくれた。ハミン(チョレント)とは肉と野菜、豆、大麦などでつくるユダヤの煮込み料理だ。鍋の中からふわーっと立ち上る湯気とともに、じっくりと時間をかけて煮込まれた肉や野菜の滋味深い香りが漂う。

「電気がない時代は、町の広場に共有の大窯がありました。金曜になると、その大窯にハミンの鍋を入れ、炭火をとろ火の状態にして温めていたそうです」とビンヨミンさん。具材や味付けは家庭によって異なるようだが、ハミンは連綿と受け継がれてきたシャバットのご馳走なのだ。

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