第83回 労働を忘れ心を整えるユダヤ教安息日の食卓

 やがて、キドゥーシュという夕食前の祈りの儀式が始まった。そして、小さなコップに注がれたワインを飲む。それから手を洗い清め、家長がハーラ(パン)に塩をかける。これには祝福の意味があるらしく、このハーラを口にして食事が始まる。

 ハーラは素朴だがしっとりとしていてもちもちだ。「乳製品を使わずにこれだけのもちもち感を出すにはかなり練り込んだりと、工夫する必要がありますね」と青木さん。

「ユダヤ人にとってパンは最も大切な食べものです。なぜかというと、人間はパンから生きるためのパワーをもらっている。パンの中には神様が存在しているのです」

 ハーラをほおばる私にビンヨミンさんが言った。その真意は簡単には理解できない深いところにあると思うが、古代メソポタミアで誕生したといわれるパンは古くより主食とされてきた歴史があり、ユダヤ教の聖典にもたびたび登場する。

「今日の料理はすべて子どもたちがつくったんですよ」とエフラットさんが笑顔で言った。ビンヨミンさんとエフラットさんには10人の子どもがいて、長子は21歳、末の子はまだ3歳だという。

「普段から手伝っていないとつくれないよなあ」と感心しながら、やはりシャバットの食卓に欠かせないというフムスをいただいた。中東諸国やトルコで食べられているひよこ豆のペーストだ。練りゴマがたっぷり入ったフムスはまろやかでコクがある。ハミンの肉はほろほろと崩れるほどによく煮込まれていて、舌に広がる肉の旨みに思わず笑みがこぼれる。

フムスの基本的な材料は茹でたひよこ豆と練りゴマ、ニンニク、オリーブオイル、レモン。地域によってホモス、フンムスなどとも呼ばれる
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