第83回 労働を忘れ心を整えるユダヤ教安息日の食卓

「シャバットは毎週金曜の日没から土曜の日没まで。シャバットが始まると写真が撮れなくなるので、もし必要なら今のうちに料理の撮影をしたほうがいいですよ」と青木さんのアドバイス。「なぜだろう?」と思いながらも慌ててキッチンに入らせてもらう。すでに日が傾いていたからだ。

 キッチンにはすでに料理を盛り分けたお皿が並んでいた。パンや色とりどりのサラダに空腹感が刺激される。どれも一般的なユダヤの家庭料理だという。

 現在、ユダヤ人とはユダヤ教を信仰する民族のことをいう。古代、パレスチナの地にはユダヤ人の国家があったが、紀元1世紀のローマ帝国の侵攻によって滅ぼされ、ユダヤ人は世界中に離散した。そして、信仰は各地で受け継がれていく。基本的にユダヤ人の母親から生まれた人であるか、正式な手続きのもとで改宗した人がユダヤ人と定義されるそうだ。

「中東系ユダヤ人と西欧系ユダヤ人、東欧系ユダヤ人では、2000年近くにわたって育んできた食文化が異なります。だから、ユダヤ料理の特徴を説明するのは難しいんです。ただ、1948年に建国されたイスラエルには世界中のユダヤ人が集まってきたため、中東料理を軸にさまざまな食文化が折り重なっている。イスラエルのユダヤ料理はとても味わい豊かだと思います」

 青木さんが言う。ビンヨミンさん一家は、ビンヨミンさんの父親とエフラットさんの母親がモロッコ系であることから、モロッコ料理の影響が強くみられるようだ。クミンを使ったニンジンのサラダはその一つで、この日の料理にも鮮やかなオレンジ色のニンジンサラダがある。

ニンジンサラダはシンプルだがやわらかく、クミンのさわやかな風味が味に奥行きを生んでいる
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 さて、難しいとはいわれてもソウルフードのことは聞いておきたい。食事の準備を進めるエフラットさんに尋ねると、少し考えてからこういった。

「シャバットや祝祭日に欠かせないのはハーラですね」