第83回 労働を忘れ心を整えるユダヤ教安息日の食卓

 とある金曜日の夕方、私はJR京浜東北線の大森駅に降り立った。目的地は駅から徒歩で10分ほどのところにあるコーシャジャパン株式会社。1999年に日本で初めて設立された、法人による「コーシャ」の認定機関である。

 コーシャとはユダヤ教の教えに則した食事の規定のことで、コーシャジャパンでは各食材について、規定に基づいたものかどうかを検査、認証している。最近、イスラム教のハラールフードは日本でも認知されるようになってきたが、ユダヤ教のコーシャについては知らない人も多いのではないだろうか。かく言う私もそのひとり。そこで、話を伺いたいとコーシャジャパンに問い合わせたのだ。なお、日本語ではコーシャー、コシェル、カシェル、カシュルートなどと表記される場合もあるが、ここでは「コーシャ」に統一する。

「金曜の安息日のディナーにいらっしゃい」

 ユダヤ料理(コーシャフード)を食べてみたいと言う私に、コーシャジャパンのチーフ・スーパーバイザーでラビのビンヨミン・Y・エデリーさんはこう応じてくれた。ラビとはユダヤ教の指導者のことで、イスラエル出身のビンヨミンさんはイスラエル政府が公認する日本の主席ラビだ。イスラエルはユダヤ人が人口の75%を占める国である。

ビンヨミンさんはユダヤ教の中でも特に戒律が厳しいといわれるハバッド・ルバビッチ派のラビ
[画像のクリックで拡大表示]

 コーシャジャパンは閑静な住宅街に佇む一軒家だった。株式会社というのでオフィスをイメージしていたが、ラビ一家の自宅を兼ねているようで、インターホンを押すとビンヨミンさんの奥様のエフラットさんとお子さんたちが笑顔で出迎えてくれた。

 中には先客がいた。コーシャジャパンでコーシャに関する講座を開催している各国・郷土料理研究家の青木ゆり子さんだ。普段の食事は各々が空いている時に食べるようだが、「シャバット」と呼ばれる安息日は家族で食卓を囲む。そこに友人も加わるそうで、この日も数人が集っていた。