第70回 口に広がる汁の旨みがたまらない!ボリビアの朝ごはん

 ロクサナさんは「エンパナーダも手間がかかるのでつくるのはお祝いの時が多いですね。チーズだけを入れるエンパナーダ・デ・ケソは簡単なのでよくつくりますけど」という。ケソとはスペイン語でチーズの意。エンパナーダ・デ・ケソには砂糖が少しかかっているのがポイントらしく、砂糖の甘さがチーズを引き立てるのだとか。

 そんな話を聞きながらボリビアの料理を楽しんでいる間、店には何組もの南米系の客が訪れていた。彼らとは知名さんもロクサナさんもスペイン語で会話をしている。

 ボリビアから鶴見に移り住んだ知名さんは、しばらくおきなわ物産センターで働いていたが、その後近所にいたやはりボリビアに移住していた沖縄出身の人の店を手伝うようになった。その店主は足が悪く、知名さんは店を譲り受けるかたちになったのだという。「当時のメニューはボリビアでポピュラーな3つの料理だけ。その1つがサルテーニャでした」と、知名さんは振り返る。

「私が始めてからは、おきなわ物産センターの経験も活かして沖縄料理もメニューにいれました。そのうちに、南米の人たちも来るようになって希望を聞くうちにボリビアを中心とした南米料理のメニューが増えていったんです」

 知名さんの店は南米、特にボリビアから来た人たちの拠り所なのだ。しかし、2011年の東日本大震災で多くの人が故郷へと戻ってしまったという。「10人のうち7人は帰ってしまったのではないかしら。今は日本人のお客さんのほうが多いですね」と知名さん。でも、やっぱりこの店は彼らにとって大切な場所だと思う。少なくともサルテーニャは他ではなかなか食べられないのだから。

ハチノスの煮込み「アヒ・デ・パンサ」もボリビアの代表的な料理。ボリビアの昼食や夕食は皿にライスとおかずをのせて食べることが多いそうだ
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「エル ボスケにはよく来る」というロサナさん(前列左)はアボカドなど輸入作物を扱う会社「ヒガインターナショナルグループ」を経営。ボリビア人のアラセリさん(前列右)、父が日本人、母がペルー人というまさとさん(後列左)もロサナさんの会社に勤める
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EL BOSQUE(エル ボスケ)
神奈川県横浜市鶴見区仲通1-55-5
電話:045-504-4717
※サルテーニャは基本土日のみ。すぐに売りきれるので事前に確認したほうがいい。5個以上であれば予約可能

中川明紀(なかがわ あき)

講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。何事も経験がモットーで暇さえあれば国内外を歩いて回る。思い出の味はスリランカで現地の友人と出かけたピクニックのお弁当とおばあちゃんのお雑煮