第70回 口に広がる汁の旨みがたまらない!ボリビアの朝ごはん
しかしこの汁、具の旨みが出ていてなんと味わい深いことか。中を見ると鶏肉にタマネギ、ゆで卵、ジャガイモなんかも入っている。「ボリビアの人はみんな、縦にしてかじりながら上手に汁を吸って食べるんです。慣れてない場合はスプーンを使うといいですよ」と知名さん。そして、このたっぷりな汁こそがサルテーニャの特徴だという。
「この汁を閉じ込めるために小麦粉、おもに中力粉にラードを混ぜて生地をつくるんです。エンパナーダの生地に使うのはバターやオリーブオイルなので、サルテーニャの具を入れたら汁が染み出てベタベタになってしまうんですよ」
なるほど、だから「生地が違う」と言っていたのか。確かに生地がしっかりとスープを包み込んでいる。現在はオーブンがあるが、知名さんが移住した頃は土でつくった窯でサルテーニャを焼いていたそうだ。しかし、毎朝のように食べるということは、朝からこれをつくっているのか。
「サルテーニャはほとんどの人が買って食べていますよ」と、私の問いに答えてくれたのは前のテーブルで食事をしていたロサナさん。彼女もロクサナさんと同じ、サンタ・クルス出身の女性だ。
「サルテーニャをつくれる人は少ないと思います。汁を閉じ込めるのがすごく難しいんです。だからみんなお店で買って食べる。お店によって具や味付けが違うのでそれぞれお気に入りのサルテーニャがあるけれど、どのお店も朝しか売ってないんですよね。すぐ売りきれちゃうから」とロサナさん。一方、エンパナーダは、朝が多いものの午後でも売っているのでおやつに食べることもあるという。
「エンパナーダは家でつくったりもしますよ。私もおかあさんと一緒につくりました。うちは鶏肉とシーチキン、ジャガイモ、タマネギを入れることが多かったけれど、家庭によってはニンジンやグリーンピースを入れたりとさまざま。でも、レーズンとオリーブのどちらかはどの家庭も入っているかな」
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