第70回 口に広がる汁の旨みがたまらない!ボリビアの朝ごはん
「沖縄にルーツを持つ南米の日系人たちが就労を目的に来日したんです。一番多いのはブラジル、次いでペルー、ボリビアの人たちですね」。確かに商店街には沖縄系だけではなく、南米系の食材店やレストランがいくつかあった。
明治時代に始まった移民政策によって多くの日本人が南米を中心に世界各地に移住している。特に沖縄からの移民が多く、ペルーにいたっては日系人の7割が沖縄にルーツを持つそうだ。「私も沖縄に生まれ、1958年、8歳の時に家族でボリビアに移住しました。日本に戻ってきたのは90年頃。妹など家族は今もボリビアにいます」と知名さん。
ボリビアに移住した沖縄の人たちは原生林を開拓して村をつくった。そこはオキナワ村と呼ばれるようになり、今ではボリビアの地図にも載っているという。知名さんも初めはその開拓地に住んだそうだ。
そんな話をしているところへ、時々店を手伝っているというボリビア出身のロクサナさんがある飲み物を持ってきてくれた。暑さで顔を真っ赤にして店に入ってきた私にすすめてくれたものだ。アイスティーのような色で大きな梅のような実が浮いている。梅酒みたいなものか?
「モコチンチです」
おっと、日本では声に出して言うのを躊躇してしまう名前。しかし、ほんわかと香る甘い匂い……これは桃だ。「そうそう、干した桃にお砂糖と水、シナモン、クローブを加えて煮出した飲み物です。もともと私が住んでいたサンタ・クルス(サンタ・クルス・デ・ラ・シエラの略。ボリビア東部の都市)が発祥だと思う。でも今は全国的に愛されている飲み物なんですよ」とロクサナさん。
さっそくいただくと甘くて冷たいモコチンチが疲れた体にしみわたる。後味をさっぱりさせるシナモンには血行促進や発汗作用の効果があり、夏バテ防止にもいい。ボリビアにはモコチンチを売る屋台がそこかしこにあるという。過去にはある政府高官が「アメリカのコカ・コーラを飲まずにモコチンチを飲め」といった内容の発言をしたこともあるらしい。発言の良し悪しはさておき、それほど国民に浸透した飲み物なのだろう。
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