第76回 トルコ版「味噌」? 原料はあの野菜

「思い出深い料理はいっぱいあります。ナスの煮込み、インゲン豆の煮込みは大好き。キャベツのドルマも美味しいよ。よく食卓に出たし、今もトルコに帰るとお母さんは僕の好きな料理をつくってくれるので、それを手伝って一緒に食べるのが楽しみなんです」

 ドルマとは米やひき肉、野菜をキャベツやブドウの葉で包み、スープで煮込んだトルコではポピュラーな料理。具を混ぜる時やスープの味付けにサルチャが使われる。以前、埼玉県の蕨駅近くでクルド人の料理教室に参加した時につくったことを思い出した(第52回参照、ドルメともいう)。やはりトルコでよく食べられている、水餃子に似たマントゥのソースにもサルチャは欠かせない。

 せっかくサルチャを買ったのでメテさんにレシピを教わって、家でトルコ料理に挑戦した。つくったのはメテさんが大好きだというナスの煮込み「パトゥルジャン・イエメイ」。パトゥルジャンはナス、イエメイはごはんという意味らしい。「トルコの料理名はけっこうざっくりしているんですよ」とドアル店員の宮川好美(このみ)さんが教えてくれた。

 さて、用意したのはナス、鶏のモモ肉、タマネギ、ピーマン、ニンニク、カットトマトの缶詰。鍋にオリーブオイルを引いてみじん切りにしたタマネギを炒め、透明になってきたら一度取り出してから鶏肉を炒める。タマネギを戻し、食べやすく切ったナス、ピーマンとニンニクのスライスを入れてざっと火を通したら、トマト缶とサルチャを投入。濃厚なサルチャはトマト缶1つに対して大さじ山盛り1杯程度。これだけでもぐっと深みが増すという。

 ここにトルコのスパイスと塩で味を調えるのだが、スパイスがないのでトルコでよく使われるというクミンと、家にあったカルダモンやターメリックも適当に入れる。ここけっこう重要かもしれないけれどご愛敬ということで。ちなみに、サルチャにはトマトのほかにパプリカもあって、ちょっと味を変えたい時にはパプリカのサルチャを加えるそうだ。パプリカのサルチャをトマトのように単体で使うことはあまりなく、宮川さんいわく「合わせ味噌のような感覚」らしい。

 30分ほど煮込んでパトゥルジャン・イエメイの完成。熱々を口にすると、普通につくるトマトの煮込みよりもまろやかで味に奥行きがある。くたくたになったナスにはトマトの旨みが染み込んでいてほっとするやさしい味わいだ。このサルチャ、パスタのソースにもいいし、日本人の食卓にもいろいろ利用できそうだ。

メテさんに教わってつくったパトゥルジャン・イエメイ。肉は鶏肉以外でもよく、ピーマンではなくパプリカを使うことも。トルコでは昼か夜に出る料理で、メテさんはバターライスと一緒に食べるそうだ
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