第76回 トルコ版「味噌」? 原料はあの野菜

 10キロって業務用じゃないですか……。しかし、それだけ常備しないといけないくらい頻繁に使うってことなのだ。一見、一般的なトマトピューレやトマトペーストと変わらないが、購入して開けてみると固さはそれらよりも味噌に近い。さっそく味見をする。おお、なんとも濃厚な味わい。トマトの自然な酸味や甘みが舌の上でとろけ、最後に旨みが残る。塩気や雑味はなく、トマトそのものがギューッと凝縮されている感じだ。

濃い赤色をしたトマトのサルチャ。水で溶いてトマトジュースにして飲むことも
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「そうそう、サルチャはまさにトマトを凝縮したペースト。1キロのサルチャをつくるのに6キロものトマトを使うんですよ。だから栄養もたっぷり」とメテさん。一般的なつくり方は、まずトマトのヘタを取って適当な大きさに切り、袋に入れて何日間か置き水分を出す。それを漉して潰したら大鍋でペースト状になるまで煮詰めていくのだという。煮詰めた後に数日間天日干しにすることもあり、この天日干しや袋に入れて放置している時に発酵がすすむようだ。

「もともとは保存食としてつくられたんです。昔は冬にトマトの栽培ができなかったから、夏のうちに収穫したトマトをそれぞれの家庭でサルチャにして保存した。この瓶詰はトマトだけでつくっているけれど、家庭では保存のために塩を入れることが多いですね」

 今は都市部を中心にサルチャをつくる家庭も減っているようだが、「私の故郷は小さな町なのでつくっている人も多いですよ。サルチャだけでなく果物などのジャムも自分でつくります。私のお母さんは年を取ったので、最近はサルチャを買うようにしているみたいです。メーカーもいろいろあるけれど、うちで扱っている『PENGUEN』のサルチャは保存料などが入ってなくて美味しい」とメテさん。

 メテさんの故郷はトルコの首都アンカラから西に350キロほど離れたトカット県のニクサルという町。黒海が近く自然豊かな土地でワインが有名だという。今も母親はニクサルに住んでいて、夏は標高の高い避暑地の家に、冬は麓の町で暮らす生活を送っている。メテさんにサルチャを使った母の料理について尋ねる。