89年に来日してイタリアンシェフとして腕を振るってきたエリックさん。父親の仕事で幼少時に日本に住んだことがあり、70年代のアイドルにも詳しい
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 そう言いながらエリックさんが厨房から出てきた。そんな言葉を聞いたら、ますます食べるのが楽しみになるじゃないか。本来は日替わりでデザートも付いたランチセットなのだが、事前に相談していたソウルフードを出していただく。エリックさんは私の目の前に料理がのった皿を置いた。

「これは、エノキソア・プティポワです」

 エノキソアは豚、プティポワはグリンピースという意味で、豚肉とグリンピースを煮込んだ料理だという。しかし、皿に視線を落として驚いた。よく煮込まれているのだろう、赤みがかったスープがしみ込んだ豚のブロックとグリンピース、それがホカホカの白いごはんの上にかけられていたのだ。

 盛り付けはきれいなのだが、言うなれば豚丼である。日本人に合うどころか親近感すら覚えてしまう。聞いたところ、ごはんはエノキソア・プティポワには含まれないそうだが、「ごはんと一緒に食べて」とエリックさん。かき込みたい衝動を抑えて、スプーンで口の中にいれた。

 ふわーっとトマトのさわやかな酸味が広がった。今までに食べたお隣のアフリカ大陸の料理は油が強かったので、なんとなくそれを想像していたが、さっぱりしていてシンプル。だから、豚肉のうま味とグリンピースの甘みがしっかりと舌に伝わってくる。ゴロゴロとした豚肉はやわらかく、口の中でほろりと崩れ、後からくるピリッとした唐辛子のアクセントがまた、食欲をそそる。そして、これがごはんとマッチしているのだ。

エノキソア・プティポワ。マダガスカルはハーブも豊富で、好みでのせるそうだ
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