第69回 モロッコの金曜日は“クスクスの日”

タジン鍋はフタを円錐形にすることで蒸気が逃げず、円錐の先で水滴となって鍋に戻る仕組み。食材の水分だけで調理できる、南部にサハラ砂漠が広がる国ならではの知恵だ
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 猛暑が続く7月30日の昼下がり、私は東京駅の近くにあるホテルを訪れた。この日は北アフリカのモロッコ王国の国王、モハメッド6世の即位記念日。モロッコのナショナルデーであり、このホテルでモロッコ王国大使館主催のレセプションが行われていた。

 私がこのようなイベントにいるのは、もちろんモロッコのソウルフードを求めてのこと。会場でモロッコの代表的な料理が振る舞われると聞いて参加させていただいたのだ。

「モロッコを代表する料理といえばタジンとクスクスです」

 そう教えてくれたのは、このイベントに誘ってくれたヒシャム・リフキーさん。東京・西麻布のモロッコ料理店「ル マグレブ シャンデリア」のオーナーシェフで、モロッコ王国大使館のイベントなどでも料理を手掛けている。「タジン鍋が少し前に日本でも流行りましたよね」とヒシャムさん。そうそう、円錐形のフタが特徴的な「タジン鍋」でつくる料理がヘルシーで美味しいと、一時期大ブームになった。

「タジン鍋で煮込む料理をタジンというんです。簡単にいえば、野菜を使えば野菜タジン、鶏肉がメインならチキンタジンといった感じですね」

 タジン鍋は蒸気が逃げにくい構造のため、あまり水を加えなくても食材の水分を利用して調理できる。水分が循環するので油を引かなくても焦げる心配があまりない。これがヘルシーだと言われる理由だが、モロッコではそういった認識はないらしい。