さて、サルマーレだ。トマトベースのソースで煮込んだ小ぶりのロールキャベツは驚くほどやわらかい。噛まなくてもいいくらいにほろりととろけて、肉の旨みや野菜の甘みが押し寄せてくる。ミティティと同じ挽き肉料理だがふわりとしているのはコメが入っているからか。酢漬けのキャベツを使うのがサルマーレの特徴の一つで酸味がほどよいアクセントになっている。サワークリームをつければまろやかになり、これまた何個でも食べられそうだ。

 サルマーレの横にはママリーガが添えられていた。トウモロコシ粉に牛乳とバターを加えて火にかけながら練り上げるルーマニアの主食だ。もっちりとした中につぶつぶとした食感があり、コーンのやさしい甘みが香る。ママリーガはルーマニアとウクライナに挟まれたモルドバの国民食でもあった(第49回 参照)。モルドバはルーマニア系の民族が多くを占め、またトランシルバニア地方は長らくハンガリー領だったりと、この地域は複雑な歴史を持つ。料理は国境で区切れないことを改めて感じさせられる。

 ちなみに、ルーマニアでは古くより、ママリーガが上手につくれないとお嫁にいけないと言われているそうだ。お嫁さんと言えば、とミハイさんが思い出したように話す。

「ルーマニアで勤めていたレストランでも結婚パーティーがよくありました。ルーマニアではたくさんの人を招待します。一番大きかったパーティーでは970人分の料理をつくったよ。サルマーレはだいたい一人3個。深夜の0時とか1時頃に出すんだ」

「人数もすごいけれど深夜? 昼ではなく深夜に食べるんですか」と私が驚いていると、ミハイさんは笑顔で説明してくれた。

「例えば、13~14時頃に教会で挙式をして、それから役所に婚姻届けを提出に行きます。そうするとレストランでパーティーが始まるのは17~18時頃。まずオードブルが数種類、次に魚料理が出ます。でも、その間隔が長い。料理と料理の合間にダンスタイムがあるんですよ。ルーマニアの結婚パーティーは大ダンスパーティーなんです」

サルマーレ(写真左)はサワークリームと一緒に食べるとまろやかさが増す。チーズやレーズンなど家庭によって具も異なるらしい。ママリーガ(写真右)はストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』にも登場するほどポピュラーだ
サルマーレ(写真左)はサワークリームと一緒に食べるとまろやかさが増す。チーズやレーズンなど家庭によって具も異なるらしい。ママリーガ(写真右)はストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』にも登場するほどポピュラーだ
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