第82回 夜通し続くルーマニアの結婚式、招待客の腹を満たす「サルマーレ」を食べてみた
苦手なものはニンニクに十字架、日の光で、好物は生き血。お察しの通り、世界的に有名な吸血鬼ドラキュラのことだ。19世紀末にアイルランドの作家、ブラム・ストーカーによって生み出されたこの架空の怪物には、モデルとなった実在の人物がいる。15世紀のワラキア公国の君主であるヴラド3世である。
ヴラド3世は敵国の兵士や自国の反逆者を串刺しにして処刑した。ストーカーはその残虐性に着想を得てヴラド3世のニックネームだったドラキュラの名を採用したと言われている。しかし、実際のヴラド3世は侵略してきたオスマン帝国と果敢に戦い、治安を維持した名君だった。串刺し刑は反対派に力を誇示するためのものだったようだ。
ワラキア公国があったのは東ヨーロッパにある現在のルーマニア。ヴラド3世は今もルーマニアの英雄であり、北西部のトランシルバニア地方に残る生家はレストランになっているという。そこには赤パプリカを心臓に見立てた「ドラキュラの心臓」なんてメニューもあるようだが、ルーマニアの人たちが日常的に愛する料理はどんなものなんだろう。
「パプリカ(ピーマン)の肉詰めはよく食べるよ。お店でも人気のメニューです」
そう教えてくれたのはルーマニア人のカウレア・ミハイさん。東京・錦糸町にあるルーマニア料理店「LA MIHAI(ラミハイ)」のオーナーシェフだ。ラミハイの店内はルーマニアの国旗や民族衣装で彩られ、ヴラド3世の肖像画も飾られていた。
「ルーマニアは肉料理が豊富。もちろん、黒海に面しているので魚も食べるけど、日本ほど魚の種類が多くない。肉料理のほうがよく食べるね。ルーマニアの肉料理は世界一だよ」
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