第68回 捏ねて楽しいチベット族の国民食

ロサンさんは僧侶として2003年に来日した。信心深いチベット族は一家族につき一人は必ず僧侶になるのだという
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 出来上がった“ツァンパ団子”は手のひらサイズだが、大きさや形もつくる人それぞれ。チベット族はこの団子状のツァンパを毎日のように食べるという。口に入れると麦とバターの芳醇な風味が広がった。やわらかすぎず固すぎず、素朴だがかむほどに麦の甘みが出て味わい深い。

「遠出をする時もツァンパと磚茶を携帯し、つくって食べるんですよ。バター茶がなければ、磚茶を煮出しただけのブラックティーで練る。家でも外でも手軽に食べる感じは日本のおにぎりに近いですね」

 ロサンさんの話を聞きながらツァンパ団子を口に入れる。なんだろう、食べたことがある気がするんだ、これ。食感といい、風味といい、なんだか懐かしい味……あっ!

「きなこ棒だ!」

 思わず大声を出した私を見て、「日本人はみんなそう言いますよ」とロサンさんが笑う。やっぱり、そう思うよね。砂糖を混ぜたらまさに駄菓子のきなこ棒。懐かしいはずだとバクバク食べていると、「後でお腹の中でふくらむから食べ過ぎてはいけない」とのこと。このツァンパ団子を肉料理などとともにかじりながら、バター茶を飲むのがチベット族の食卓だそうだ。

「ツァンパは体調を整えてくれる滋養食なんですよ」とロサンさん。カルシウムや食物繊維が豊富で、携帯にも便利なツァンパは遊牧系のチベット族に昔から欠かせないものだったのだろう。そして、ヤクも。ヤクは標高3000メートル以上の高地に生息する動物だ。平均標高が4000メートル以上というチベット高原では貴重な家畜であり、肉や乳製品は生きるための大切な栄養源なのである。

完成したツァンパ団子。置いておくと固くなるので食べるぶんだけつくるが、慣れていないと粉が少ないと言って粉を足し、今度はバター茶が少ないとバター茶を足して、いつのまにか大量につくってしまったりするらしい
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