第68回 捏ねて楽しいチベット族の国民食

 厚めの皮から飛び出す肉汁に思わず、ムフフと笑ってしまう。歯ごたえのある野菜は……セロリだ。ぎゅうっと凝縮された肉のうま味の後に、爽やかな風味が口の中にさっぱり感をもたらす。確かに味付けはシンプルだが、そのぶん素材の味が伝わってくるなあ、とゆっくりかみしめる。

モモは日常的にも食べるが、正月などの行事にも欠かせない料理だ。ヤクの肉のほか、羊の肉も使い、野菜はセロリやキャベツ、タマネギなど家庭によってさまざま
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 飲み込んだところで、熱々のバター茶をすする。茶葉を固めた磚茶(たんちゃ・団茶ともいう)を煮出し、バターと塩、ミルクを加えて撹拌したお茶で、チベット族の人は毎日数十杯も飲むそうだ。日本人の私にも飲みやすいようマイルドにしてくれているのだが、バターの風味が香るほっと落ち着く味。これも本来はヤクのバターや乳を使うという。さらに、ロサンさんはこう付け加えた。

「チベット族の主食、ツァンパを食べる時にもバター茶は欠かせないんですよ」

 ツァンパとは裸麦を炒って粉にしたもの。お粥のようにして食べたり、団子状にしたりと様々な食べ方があるが、団子にする時にバター茶を使うのだとロサンさん。お店でも食べられるというのでお願いすると、出てきたのは粉、つまりツァンパとバター茶、それからバターにヤクの乾燥チーズ……これ、どうやって食べるの?

「自分でつくって食べるんですよ」とロサンさんは言って、バター茶にツァンパ、バター、乾燥チーズを入れて手で捏ねだした。ツァンパがバター茶やバターを含み、だんだんと塊になっていく。

「バター茶で固さを調節しながら団子にします。ツァンパとバター茶の加減が慣れないと難しい。最近の若者は自分で上手にできず、親につくってもらう子も増えているみたいだけど、本来は自分の食べるぶんだけ自分でつくるんですよ。甘いのが好きなら砂糖、辛くしたいならチリソースを入れて好みの味にするんです」

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「ツァンパの団子はバターをたっぷりいれたほうが美味しい」とロサンさん。粉のダマがなくなるまでよくこねる