辛いが大丈夫なのかと問うと、「小さい頃から日常的に食べているから大丈夫」とグレさんは笑う。乳幼児には刺激が強い気がするのだが、これも文化か。「お、ビールのつまみになりそう」と言うのは、ブドウの葉を味見したMちゃん。日常的に酒を飲むことが文化の酒好きである。

 具を詰めたら蒸してできあがりだ。ピスタチオを使ったデザートも次々と焼き上がり、サラダもできあがっている。あとはスープかな、と振り向くと……まだ団子をつくっていた。こりゃ大変だと手伝いに走る。みんなで無心にコロコロと団子を丸め、ようやく生地がなくなった時には歓声が上がった。

 しかし、まだ終わりではない。羊のすじ肉を煮込んだスープにひよこ豆を加え、沸騰させてから団子を投入。ニンニク、塩コショウで味付けし、ヨーグルトをたっぷりと加えて、最後に唐辛子粉とナーネを入れて熱したオリーブオイルを豪快に入れて完成。なかなか手の込んだ料理だ。「つくるのが大変だからあまり好きじゃないのよ」なんて笑う人もいた。

ロホケ・マストのロホケは「丸い」、マストは「ヨーグルト」という意味
ロホケ・マストのロホケは「丸い」、マストは「ヨーグルト」という意味
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 さあ、待ちに待った試食の時間。まずはロホケ・マストをいただいた。ピリッと辛いがヨーグルトの風味がさわやか。まろやかな舌ざわりでコクがある。クスクス団子もピリ辛だがモチモチとしてかむほどに甘みが広がる。辛み、甘み、酸味に羊肉のうま味と、いろいろな味が合わさって生まれる複雑な味わい。ついつい後を引いてしまう。

 ドルメ・フシュクはけっこう酸味が強くてさっぱり。ナスもピーマンも歯ごたえがあって甘いが、最後にじわじわと辛さがやってくる。「ビールがほしくなるなあ」とMちゃん。やっぱり酒かい!

 料理を食べながら世間話をしていると、4月に起こった熊本地震に話題が及んだ。彼女たちは近々、街頭募金をするという。聞けば、クルドの男性たちは地震発生の1週間後にボランティアに出かけたそうだ。「建設現場や解体業の仕事をしている人が多いので役に立つと思って」とグレさんは言う。2011年の東日本大震災でも炊き出しに出かけたというので、その理由を尋ねた。

手前右がドルメ・フシュク、左がロホケ・マスト。「クルド料理は味の幅が広く日本人に合うと思います。クルド料理に比べてイラン料理は油っぽくて重い。トルコ料理は似ているけれどトルコは豆をよく使い、クルドは野菜が多いですね」(グレさん)
手前右がドルメ・フシュク、左がロホケ・マスト。「クルド料理は味の幅が広く日本人に合うと思います。クルド料理に比べてイラン料理は油っぽくて重い。トルコ料理は似ているけれどトルコは豆をよく使い、クルドは野菜が多いですね」(グレさん)
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