生徒が集まったところで教室が始まった。今回はサラダ、スープ、メイン、デザートの4品を、4つのキッチン台に分かれてつくるらしい。クルドの女性たちがそれぞれ担当を持ち、生徒はキッチンを自由に行き来する。サラダは最後につくるとのことで、まずは3カ所で調理開始。最も賑わいを見せるメイン料理のキッチンに行き、何をつくるのか問う。

「ドルメ・フシュクです」

 クルドの食卓によく並ぶ家庭料理だという。名前だけではわからないのでキッチンをのぞきこむと、不思議な食材が目に入った。色は赤と紫、水分がなくシワシワで、ヒモでつながれている。干し柿をさらに乾燥させたような感じだ。

干したナスとピーマン。これは輸入したもので湿度の高い日本ではまだつくったことがないという
干したナスとピーマン。これは輸入したもので湿度の高い日本ではまだつくったことがないという
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「干したナスとピーマンです」とグレさん。ナスやピーマンを干すのかと驚くと、カボチャやキュウリも干すという。「畑でつくった野菜を干すんです。遊牧生活を送るクルド人は、夏の間は羊が食べる草が豊富な山で生活します。干した野菜は一年中食べられるから、保存食として欠かせないんですよ」

 干しナスにおいては、富山でも越冬の保存食として食べられている。しかし、この干しナスが不思議なのは中身がないこと。「中身はスープに使ったり家畜のエサにしたりします。ドルメ・フシュクは干したナスやピーマンの中にお米や肉などの具を詰めた料理です」と、ナスとピーマンをもどすために茹でる準備をしながらグレさんは説明してくれた。茹でている間に中に入れる玉ネギやニンニクを刻むという。

 隣のキッチンではクスクスを使ったスープ、ロホケ・マストをつくっていた。これもポピュラーな家庭料理だという。クスクスはデュラム小麦を原料にした、いわゆる“粒状のパスタ”。北アフリカ発祥とされるが、「クルドでも食べるのかあ」と思って見ると、なんと水をいれてクスクスをこねている。塩コショウ、玉子、唐辛子、粉末のナーネ(ミント)も入れ、パン生地のようにこねあげていく。けっこうな力仕事だ。

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